グルコースの構造式

グルコース(化学式:C6H12O6、分子量180.2)は、鎖状アルデヒド構造、αとβの2つの六員環構造(ピラノース)、αとβの2つの五員環構造(フラノース)の合計5つの形が存在し、水中ではこれらが平衡状態となっています。

このページでは、D-グルコースの構造式をフィッシャー投影式やハース式などで示しています。

また、D-グルコースのβ体がα体よりも安定である理由も説明しています。



もくじ

  1. 鎖状構造
  2. ピラノース(六員環)
  3. フラノース(五員環)

鎖状構造

まずは鎖状構造をフィッシャー投影式で表してみましょう。

D-グルコースはフィッシャー投影式を用いて次のように表されます。

D-グルコースのフィッシャー投影式
D-グルコースのフィッシャー投影式

ここで、十字の中心に (R) や (S) と書いてあるのは、不斉炭素原子に対する立体化学を RS 表示法で表したものです。構造式を書くときには、必ずしも記す必要はありません。

フィッシャー投影式は、十字で表された構造式の中心に不斉炭素原子が位置するものとし、その上下に位置する原子は紙面の奥に、左右に位置する原子は紙面の手前に出ているものとして表現する方法です。


破線-くさび形表記に変換すると、次のようになります。

D-グルコースの破線-くさび形表記
D-グルコースの破線-くさび形表記

ピラノース(六員環)

グルコースの六員環構造(6つの原子で環を形成している構造)は、5位の炭素原子に結合するヒドロキシ基が、アルデヒド基に付加することで生成します。

このとき、1位の炭素原子は新たに不斉炭素原子となり、2種類の立体異性体が生じます。

D-グルコースの、1位の炭素原子に結合する-OHと、6位の-CH2OHが環平面に対して反対側にあるものをα体、同じ側にあるものをβ体と呼びます。

α-D-グルコースとβ-D-グルコースの構造式(ハース式)
α-D-グルコースとβ-D-グルコースの構造式(ハース式)

上の構造式はハース式と呼ばれるもので、六員環構造を潰して書き、これに結合する基を垂直に書いたものです。

実際の環の構造は、同じ六員環構造を持つシクロヘキサンのイス形配座と同等のものです。次の構造式は、その状態を分かりやすく描いたものです。

α-D-グルコースとβ-D-グルコースの構造式(イス形配座)
α-D-グルコースとβ-D-グルコースの構造式(イス形配座)

β体がα体よりも安定である理由

上の構造式から、D-グルコースのβ体がα体よりも安定であることが分かります。実際、水溶液中ではβ体63%に対して、α体37%程度の割合で存在しています(鎖状構造は0.01%程度)。

構造式を見ると、1位の炭素に結合するヒドロキシ基(図では赤色)が、α体では環に垂直な方向に出ている(アキシアル位)のに対し、β体では間に平衡は方向に出ている(エクアトリアル位)ことが分かります。

α体のようにアキシアル位に置換基が存在している場合、同じ向き出ている原子(団)との立体的な反発によって不安定化してしまいます。これを1,3-ジアキシアル相互作用といいます。そのため、エクアトリアル位に置換基が存在するβ体の方が安定となるのです。

このような視点で見ると、D-グルコースはあらゆる置換基がエクアトリアル位に出ていることが分かります。つまり、安定な化合物であり、これが、グルコースが天然に豊富に存在する一つの理由となっていることが予測できます。

※ 一方で、β-D-グルコースを不安定化させる要因もあります。それは、環を形成する酸素原子の非共有電子対と1位の炭素に結合するヒドロキシ基との間の立体的な反発です。

フラノース(五員環)

グルコースの五員環構造(5つの原子で環を形成している構造)は、4位の炭素原子に結合するヒドロキシ基が、アルデヒド基に付加することで生成します。

五員環は六員環よりも不安定な構造です。

六員環構造のピラノース同様に、1位の炭素原子は新たに不斉炭素原子となり、2種類の立体異性体が生じます。そして、1位の炭素原子に結合する-OHと、6位の-CH2OHが環平面に対して反対側にあるものをα体、同じ側にあるものをβ体と呼びます。

α-D-グルコフラノースとβ-D-グルコフラノースの構造式
α-D-グルコフラノースとβ-D-グルコフラノースの構造式