階乗の意味と計算方法、使い道

階乗とは、1 からある数までの連続する整数の積のことです。1 から n までの連続する n 個の整数の積を n の階乗といい、n! と書き表します。なお、0 の階乗 は 1 と定められています。

階乗の計算方法

\begin{align*} n! &= n(n-1)(n-2)\cdots\cdot 3\cdot 2\cdot 1 \\[5pt] 0! &= 1 \end{align*}

階乗は高校 1 年生の場合の数や確率の計算で初登場します。

このページでは、階乗の計算方法使い道、そして 0 の階乗を 1 と定める理由を説明しています。



もくじ

  1. 階乗の計算方法
  2. 階乗の使い道
  3. 0 の階乗を 1 と定める理由

階乗の計算方法

階乗とは、1 からある数までの連続する整数の積のことです。1 から n までの連続する n 個の整数の積を n の階乗といい、n! と書き表します。なお、0 の階乗 は 1 と定められています。

階乗を表す記号は、「!(エクスクラメーションマーク)」です。日本語で感嘆符、ビックリマークというものですね。

階乗の計算方法

\begin{align*} n! &= n(n-1)(n-2)\cdots\cdot 3\cdot 2\cdot 1 \\[5pt] 0! &= 1 \end{align*}

それでは、例題を一緒に解いて、階乗の計算方法を確認していきましょう。

4 の階乗を計算せよ。

4 の階乗(4!)とは、1 から 4 までの連続する整数の積です。つまり、1, 2, 3, 4 をすべて掛けた数ということになります。

よって、計算すると次のようになります。なお、ここでは掛け算の記号として「×」ではなく「・」を使用しています。

\begin{align*} 4! &= 4\cdot 3\cdot 2\cdot 1 \\[5pt] &= 24 \end{align*}

よって、4 の階乗は 24 と求まりました。


もう一つ例を解いてみましょう。

$\frac{5!}{3!}$ を計算せよ。

このような分子と分母に階乗を含む計算は、順列($_n\mathrm{P}_r$)や組み合わせ($_n\mathrm{C}_r$)の計算をするときに必要になります。計算の際に分子と分母を約分することができるので、大幅に計算量を減らせます。

\begin{align*} \frac{5!}{3!} &= \frac{5\cdot 4\cdot 3\cdot 2\cdot 1}{ 3\cdot 2\cdot 1} \\[5pt] &= \frac{5\cdot 4}{1} \\[5pt] &= 20 \end{align*}

よって、$\frac{5!}{3!}=20$ と求まりました。

この例題のような約分は、数値の階乗であればだれもが気付くでしょう。しかし、文字式の階乗どうしの約分になると、なかなか気づきにくいものです。注意しましょう!

階乗の使い道

階乗を利用する最も身近な場面は、順列や組み合わせを求めることです。ここでは、次の例を解くのに階乗を使って計算してみましょう。この問題の答えは 3! 通りであり、階乗を使うと計算式をとっても簡単に表すことができます。

1, 2, 3 と書かれた 3 枚のカードを、横一列に並べる並べ方の総数を求めよ。

この問題は、次の図のように 1, 2, 3 という数字が書かれた 3 枚のカードを一列に並べることを考えます。

1, 2, 3 の順で並んだカード
1, 2, 3 の順で並んだカード

上の例では、1, 2, 3 の順で並んでいますね。これが一つの並べ方です。このカードを並び替えて、他のカードの並びを作ります、例えば次のように、1, 3, 2 の順に並べたものがあります。

1, 3, 2 の順で並んだカード
1, 3, 2 の順で並んだカード

さて、このようにカードを並べるとき、それは何通りあるのか?をこの問題では求めます。この問題の答えは数が少ないので、やみくもに探しても求めることができるでしょう。先に答えを示すと、次の 6 通り(= 3! 通り)になります。

1, 2, 3 の 3 枚のカードの全ての順列
1, 2, 3 の 3 枚のカードの全ての順列

いまはカードが 3 枚だけと少ないので、手探りですべての場合を求めることも可能ですが、カードの枚数が多くなるとこれはとても大変な作業です。そこで、この問題を数学的に考えていきましょう。

まず、下の図に示したように、カードを置く場所(図に点線で示した四角)を作ります。この左の枠から順番に、1, 2, 3 のいずれかのカードを置くと考えましょう。

点線の枠に、3 種類のカードのいずれかを置く
点線の枠に、3 種類のカードのいずれかを置く

まず、一番左の四角(点線)に置くカードを考えます。これは、いまある 1, 2, 3 の 3 種類のカードいずれかを置くことができます。

一番左に置くカードは 3 通りある
一番左に置くカードは 3 通りある

下の図には、一番左の枠に 1 のカードを置いた場合、2 のカードを置いた場合、3 のカードを置いた場合のそれぞれを書きました。このように、一番左の枠に置くカードは 3 通りあります。

一番左の枠にカードを置いた様子(3 通りある)
一番左の枠にカードを置いた様子(3 通りある)

次に、真ん中の枠に置くカードを考えます。さきほど、一番左に 1 のカードを置いていた場合、残っているカードは 2 と 3 の 2 種類です。このどちらかを真ん中の枠に置くことができます。

真ん中に置くカードは 2 通りある
真ん中に置くカードは 2 通りある

ここでは、一番左の枠に 1 のカードを置いた場合を考えましたが、一番左に 2 のカードを置いた場合は、1 か 3 のカードが残っているので、2 通りあります。一番左に 3 のカードを置いた場合は 1 か 2 のカードが残っているので、やはり 2 通りあります。

このように、一番左に置いたカードの種類によらず、真ん中の枠に置くカードは、残った 2 種類のカードのどちらかですね。よって、真ん中の枠に置くカードは 2 通りあります。

最後に、一番右の枠に置くカードを考えます。ここまでで、左の枠に置くカードと、真ん中の枠に置くカードを考えました。すると、残っているカードは残り 1 枚なので、一番右の枠にはその残りのカードを置くしかありません。よって、一番右の枠に置くカードは 1 通りです。

一番右に置くカードは 1 通りある
一番右に置くカードは 1 通りある

さて、これで順列の説明は終わりです。最後に、階乗を使ってここまでのお話を式で表してみましょう。

この問題では、3 枚のカードを横一列に並べる並べ方の総数を考えました。左の枠に置くカードから順に考えると、一番左に置けるカードは 3 枚ありました。その右(= 真ん中)の枠におけるカードは、一番左に置いたカードの種類各々に対して、残りの 2 枚ありました。さらにその右(= 一番右)の枠におけるカードは、左と真ん中の枠に置いたカード各々に対して、残りの 1 枚でした。

これを樹形図で表したのが下の図です。

カードの並べ方の樹形図
カードの並べ方の樹形図

よって、並べ方の総数は、3 × 2 × 1 通りと表すことが出来るのです。このように順列を考えるとき、1 からある数までの連続する整数の積を計算する必要があります。これを端的に書くために階乗を使うのです。この例題の場合、3 × 2 × 1 は階乗を使って 3! と表すことができます。

この例題ではカードが 3 種類の場合を考えましたが、4 種類、5 種類… と増えていったときも、その並び方の総数は階乗を使うと簡単に表すことができます。カードが 4 種類の場合は 4! 通り(= 24 通り)であり、カードが 5 種類のときは 5! 通り(= 120 通り)になります。

ちなみに、10 種類の異なるカードをすべて並べる順列は、10! 通りですが、これを計算すると 3,628,800 通りとなります。一気に大きな数字となりましたね。

以上、階乗を使う理由を説明しました。

0 の階乗を 1 と定める理由

0 の階乗(0!)は 1 と定められています。

0 の階乗

\begin{align*} 0! &= 1 \end{align*}

ここからは、0 の階乗を 1 と定める理由を説明します。


まず順列の表し方と計算方法を示します(詳しい説明はしません)。n 個の異なるものから r 個を取り出して並べる順列の総数を $_n\mathrm{P}_r$ と書き、積の法則より次のように表せます。

n 個の異なるものから r 個を取り出して並べる順列の総数

\[_n\mathrm{P}_r = \frac{n!}{(n-r)!} \]

$(0\lt r \lt n)$

この式の $r$ が $n$ のときでも成り立つようにするために、0 の階乗を 1 と定める必要があります。

どういうことかを説明します。上の式で $r$ を $n$ にすると、これは「n 個の異なるものから n 個を取り出して並べる順列の総数」となり、式は次のようになります。

\[ _n\mathrm{P}_n = \frac{n!}{0!} \]

一方、この「n 個の異なるものから n 個を取り出して並べる順列の総数」は、上の「階乗の使い道」の項目で説明した通り、「n 個の異なるもの(カード)を全て並べた順列の総数」と同じ意味になります。その並べ方の総数は、前の項目で説明した通り n! でした。

ゆえに、次の式が成立するようにすれば、$_n\mathrm{P}_r$ の計算式を $r$ が $n$ のときでも成り立つようにすることができます。

\[ \frac{n!}{0!} = n! \]

この式が成り立つようにするには、0! を 1 とすればよいですね。したがって、0 の階乗は 1 と定められているのです。