石灰水の反応のしくみ
このページでは、石灰水の反応のしくみについて高校学習レベルで解説しています。前ページでは、家庭にある石灰乾燥剤で石灰水を作る方法を紹介していますので、そちらもぜひご覧ください。
教科書で学習するレベル(目安)
高校レベル
高校レベルでは、石灰水をつくる段階と、石灰水が二酸化炭素と反応する段階のそれぞれについて、化学反応式を用いて説明をしてみましょう。
また、この反応が中和反応であることに注目してみましょう。
化学反応式で表す
生石灰が消石灰になる段階
生石灰とは酸化カルシウムと呼ばれる物質で、化学式CaOで表されます。これは水と反応して水酸化カルシウム(別名:消石灰)Ca(OH)2となります。この時、大きな熱を出すため温度が上昇します。
CaO + H2O → Ca(OH)2
この反応は、生石灰が乾燥剤としての役割を果たす時も同様です。つまり、空気中の水蒸気を吸収することでこの反応が起こっています。
生石灰が入っている袋に「禁水」と書かれているのは、この発熱によるやけどや火事を防ぐためです。今回の実験ではできるだけ多くの水を入れることで温度上昇を和らげました。
生石灰はグラウンドのラインパウダーとして用いられているようですが、化学式を見てわかる通りアルカリ性の物質であり、目に入ると危険なため、最近では炭酸カルシウムCaCO3など、ほかの物質を使用するようになっているようです。
さて、これで石灰水ができました。石灰水とは、まさにこの消石灰の水溶液なのです!
二酸化炭素と反応する段階
石灰水と二酸化炭素の反応は次の通り表されます。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
最終的にできるのは炭酸カルシウムCaCO3です。これはチョークの主成分として知られていますね。溶解度は非常に小さいため、沈殿し、溶液が濁って見えます。
塩化カルシウムで検出できないのはなぜ?
この二酸化炭素の検出反応は、最終的に炭酸カルシウムを沈殿させるものでした。石灰水の成分である水酸化カルシウムCa(OH)2ではこの反応を行えますが、同じカルシウムイオンを含む塩化カルシウムCaCl2は二酸化炭素と反応を起こしません。それはなぜでしょうか?
ここでは、二酸化炭素が水に溶けて一旦炭酸H2CO3に変化しているとして考えます。
CO2 + H2O → H2CO3
この炭酸が、Ca(OH)2またはCaCl2と反応するときの反応式は次のように書くことができます。上の反応は起こりますが、下の反応は実際には起こりません。
Ca(OH)2 + H2CO3 → CaCO3 + 2H2O
CaCl2 + H2CO3 → CaCO3 + 2HCl (反応しない)
生成物として炭酸カルシウムCaCO3が得られているのはどちらの反応も同じです。ここで注目すべきは、上の反応は中和反応であるということです。
つまり、上の反応はH+とOH-が結合することにより物質の持つエネルギ-が下がるため、それだけ反応は右向きに起こりやすいと考えられます。
一方で下の反応においては、反応後はH+もCl-も電離したままの状態となるので、結合エネルギーによる安定化は起こりません。反応前のH原子は、H+として存在するよりもHCO3-やH2CO3の形で存在しているものの方が多く(つまり弱酸である)、反応後にH+として完全電離の状態にあるよりも、反応前のHCO3-やH2CO3の状態の方が結合エネルギーによる安定化を受けられるため、反応前の方が安定だと考えられます。
これが塩化カルシウムCaCl2が二酸化炭素と反応しない理由です。
前ページでは、家庭にある石灰乾燥剤で石灰水を作る方法を紹介しています。