浸透圧の計算 - 浸透圧はなぜ生じるのか?
このページでは、浸透圧の計算方法を例題とともに説明しています。
浸透圧が生じる理由については、前ページで紹介していますので、そちらもぜひご覧ください。
この記事のレベル(目安)
高校生向け
浸透圧の計算式(ファントホッフの式)
浸透圧Π[Pa](大文字のパイ)は次の計算式(ファントホッフの式)により求められます。
\[ \Pi V = nRT \]
この式における各文字の意味は次の通りです。
- Π
- 浸透圧 [Pa]
- V
- 溶液の体積 [L]
- n
- 溶質の全モル数 [mol]
- R
- 気体定数(8.31×103 [Pa L K-1 mol-1])
- T
- 絶対温度 [K]
注意すべき点は、n に溶質の"全"モル数を用いる点です。すなわち、溶液中で電離する物質についてはそれを考慮しなければなりません。たとえば 1 mol の NaCl を溶かした場合、溶液中では Na+ と Cl- に電離するため、全モル数は 2 mol となります。
この式が、気体の状態方程式 pV = nRT と同じ形であることにも注目しましょう。
浸透圧の計算
先ほどのファントホッフの式を用いて、浸透圧を計算してみましょう。
塩化ナトリウム 58.5 g を水に溶かして 1 L の NaCl 水溶液を作った。この溶液の 27 ℃ における浸透圧を求めよ。
NaCl=58.5 [g/mol] より、溶かした NaCl は 1 mol であることが分かります。ただし、NaCl は溶液中で Na+ と Cl- に電離するため、全モル数は 2 mol であることに注意しましょう。
n=$ \frac{58.5 \, \text{g}}{58.5 \, \text{g}\,\text{mol}^\text{-1}} \times 2 $ = 2 [mol]
R=8.31×103 [Pa L K-1 mol-1]
T=(273+27)=300 [K]
これらを \[ \Pi V = nRT \] に代入して、 \begin{align*} \Pi \cdot 1 &= 2 \cdot (8.31 \times 10^3) \cdot 300 \\ \Pi &= 5.0 \times 10^6 \, \mathrm{[Pa]} \end{align*} となります。
気体の1気圧≒105Pa ですから、浸透圧として、その50倍の大きな圧力が生じているということになります。
ちなみに、NaCl の 25 ℃ における溶解度は 35.9g/100g水 なので、この問題において NaCl は十分溶けきります。
前ページでは浸透圧が生じる理由を説明しています。あわせてご覧ください。