ニンヒドリン反応の利用法と反応機構

ニンヒドリン反応とは、アミノ酸の存在をニンヒドリンの呈色によって検出・定量する方法です。ニンヒドリンは、アミノ酸のアミノ基と反応することで、青紫~赤紫色を呈します。

このページでは、ニンヒドリン反応の利用方法と反応の原理(反応機構)について説明しています。

ニンヒドリンの構造式


もくじ

  1. ニンヒドリン反応とは
  2. ニンヒドリン反応の利用
  3. ニンヒドリン反応の原理(反応機構)

ニンヒドリン反応とは

ニンヒドリン反応とは、ニンヒドリンがアミノ酸が持つアミノ基と反応して青紫~赤紫色(ルーヘマン紫)に呈色する反応です。

この反応によって、アミノ酸の検出や定量を行うことが出来ます。

ニンヒドリン反応の反応式
ニンヒドリン反応の反応式

上式の通り、ルーヘマン紫を生成するには、試料であるアミノ酸からNH3が脱離する必要があります。したがって、NH3が脱離しにくい芳香族アミンや、アミノ基-NH2を持たないプロリンはニンヒドリン反応を示しません。ただし、プロリンと反応した場合は、プロリン黄と呼ばれる黄色の色素を生成します。

ニンヒドリン反応は非常に敏感な反応であるため、α-アミノ酸だけでなく、たんぱく質やペプチド中のα-アミノ基とも反応します。したがって、これらの検出反応としても用いられます。

ニンヒドリン反応の利用

ニンヒドリン反応では、アミノ酸の濃度が大きいほど濃く発色するため、これを用いてアミノ酸の定量に利用することが出来ます。

定量時の注意点としては、反応の途中で生成するニンヒドリンの還元体は空気で酸化されやすいため、反応時にSnCl2などの還元剤を加える必要があります。

ニンヒドリン反応の原理(反応機構)

ニンヒドリン反応は、アミノ酸のアミノ基1つに対し、ニンヒドリン2分子が結合することで、長い共役鎖を持った分子が生成します(ルーヘマン紫)。この分子が、紫色を呈することで、アミノ酸を検出できます。

この反応の原理は、次の通りです。ただし、脱水、イミンの生成、イミンの加水分解の反応機構は省略しています。

  1. ニンヒドリンは、次の構造と平衡状態にある(水が脱離する)。
    平衡反応の矢印

    ニンヒドリンは、次の構造と平衡状態にある(水が脱離する)。

  2. 微量の酸触媒により、イミンが生成する(反応機構は省略)
    反応の矢印

    微量の酸触媒により、イミンが生成する(反応機構は省略)。

  3. 脱炭酸が進行する。
    反応の矢印

    脱炭酸が進行する。

  4. 二重結合にプロトンが付加する。
    反応の矢印

    二重結合にプロトンが付加する。

  5. イミンの加水分解が起こる。
    反応の矢印

    イミンの加水分解が起こる(反応機構は省略)。

  6. もう1分子のニンヒドリンとイミンを生成する。
    反応の矢印

    もう1分子のニンヒドリンもう1分子のニンヒドリンとイミンを生成する(反応機構は省略)。

  7. 脱プロトン化が起こる。
    反応の矢印

    プロトンが失われ、長い共役鎖を持ったルーヘマン紫が生成する。

  8. ルーヘマン紫の構造式(ニンヒドリン反応の最終生成物)