比重の意味と計算方法、種々のデータ

比重とは、ある温度におけるある物質の密度と標準物質の密度の比のことをいいます。

固体・液体物質の比重と密度の違いは、比重には単位がないが、密度には単位があるということで、近似的には一致します。

このページでは、比重の意味と計算方法について説明し、いくつかの物質のデータを掲載しています。


もくじ

  1. 比重とは
    1. 比重の単位
    2. 固体・液体の比重
    3. 気体の比重
  2. 種々の物質の比重と密度
  3. 比重の計算方法

比重とは

比重とは、ある温度におけるある物質の密度と標準物質の密度の比のことをいいます。

2種類の物質の比重を比較すると、その物質が浮くのか、沈むのかどうかを判断することが出来ます。。

例えば、水の比重 1 より比重が小さい物質は水に浮き、1 より比重が小さい物質は水に沈みます(水と混ざらない物質に限る)。実際、灯油の比重は 0.78 ~ 0.84 と 1 より小さいため水に浮かび、鉄の比重 7.87 は 1 より大きいため水に沈みます。

鉄と灯油、水の比重と浮き沈みの関係
鉄と灯油、水の比重と浮き沈みの関係

また気体についても、空気の比重を 1 とし、これと比較することで、その気体が浮きやすいのか、沈みやすいのかを判断することが出来ます。アンモニアの比重は 0.597 と 1 より小さいため、空気中で浮きやすい物質です。(よって、アンモニアを発生させたときは上方置換で集めます(水に溶けやすいため、水上置換は不可))。また、ヘリウムの比重は 0.138 と非常に小さいため、ヘリウムガスを入れた風船は空高く飛んでいきます。

比重の単位

比重に単位はありません。すなわち、無次元の量です。

次に示す比重の計算式から分かる通り、比重とは密度の「比」であるため、密度の割り算をする際に単位は消えてしまいます。

固体・液体の比重

固体・液体に対する標準物質としては通常 4 ℃ の水(密度 0.999973 g cm-3を用います。

固体・液体の比重は次の計算式から求められます。

\begin{align*} \text{固体・液体の比重} &= \frac{\text{物質の密度}}{\text{4℃の水の密度}} \\ &= \frac{\text{物質の密度}\text{ [g cm}^{-3}\text{]}}{0.999973 \text{ g cm}^{-3}} \\ &\approx \frac{\text{物質の密度}\text{ [g cm}^{-3}\text{]}}{1.0 \text{ g cm}^{-3}} \\ &\approx \text{物質の密度(無単位)} \\ \end{align*}

4℃の水の密度 0.999973 g cm-3 は 1.0 g cm3 にほぼ等しいです(式中の $ \approx $ は「ほぼ等しい」ことを表します)。よって、固体・液体の比重は、その物質の密度(単位:g cm3)を無次元(無単位)にしたものにほぼ等しくなります。

1 で割ってもその数字部分は変わりませんが、割り算によって単位は消えるため、無次元の量になります。


気体の比重

気体に対する標準物質には多くの場合、0 ℃、1 atm の空気(密度:1.293 kg m-3を使います。

気体の比重は次の計算式から求められます。

\begin{align*} \text{気体の比重} &= \frac{\text{物質の密度}}{\text{0℃、1 atm の空気の密度}} \\ &= \frac{\text{物質の密度}\text{ [kg m}^{-3}\text{]}}{1.293 \text{ kg m}^{-3}} \\ \end{align*}

気体の比重についても、無次元であり、単位はありません。

種々の物質の比重と密度のデータ

下の表に、いくつかの固体・液体物質の比重と、気体物質の比重のデータをそれぞれ掲載しています。

温度の条件に注意してください。下の表は 20 ℃ におけるデータのため、水の比重は 1 ではありません。

固体物質の比重と密度(20℃ = 293 K におけるデータ)
物質比重密度 ρ / (g cm-3)
0.9980.998
7.8747.874
19.32119.320
10.50010.500
8.9608.960
11.35011.350
アルミニウム2.6982.698
水銀13.54613.546

上の表に挙げた物質の比重と密度は、有効数字 4 桁の範囲では同じ数値であることが分かります。比重と密度の違いは、比重には単位がないということです。

水の比重が 1 より若干小さいのは、上のデータは「20℃」における値だからです。標準物質である 4 ℃ の水に比べ、20 ℃ の水はわずかに密度が小さい(膨張している)ため、比重は 1 より小さくなっています。これは、温かい水は上にいくという現象と対応しています。

アルミニウムの比重は 2.70 と、他の金属に比べてかなり軽い金属であることが分かります。この軽量な性質を生かしつつ、強度を増強させたジュラルミンという合金が、窓枠や航空機などに用いられているのです。


気体物質の比重と密度(0 ℃、1 atm におけるデータ)
物質比重密度 ρ / (kg m-3)
空気11.293
酸素1.1051.429
窒素0.9671.250
二酸化炭素1.5291.977
塩素2.4863.214
アンモニア0.5960.771
ヘリウム0.1380.179

気体の比重は、0 ℃、1 atm の空気の密度 1.293 kg m-3 を用いているため、比重と密度の数値は一致していません。

実験室で気体を発生させたとき、水に溶けやすくかつ比重が 1 より小さいアンモニアは上方置換で集め、比重が 1 より大きい二酸化炭素や塩素は、下方置換で集めるのです。

比重の計算

比重とは」の項目で述べた通り、固体・液体の比重は次の計算式によって求められます。

\begin{align*} \text{固体・液体の比重} &= \frac{\text{物質の密度}}{\text{4℃の水の密度}} \\ &= \frac{\text{物質の密度}\text{ [g cm}^{-3}\text{]}}{0.999973 \text{ g cm}^{-3}} \\ &\approx \text{物質の密度(無単位)} \\ \end{align*}

これを用いて、いくつか計算問題を解いてみましょう。

アルミニウムの塊 1000 cm3 の質量を測定すると、2.7 kg であった。アルミニウムの比重を計算せよ。

まずは、アルミニウムの密度を求めます。

\begin{align*} \text{アルミニウムの密度} &= \frac{2.7 \text{ kg}}{1000 \text{ cm}^3} \\ &= \frac{2.7 \times 10^3 \text{ g}}{1000 \text{ cm}^3} \\ &= 2.7 \text{ g cm}^{-3} \end{align*}

よって、アルミニウムの密度は 2.7 g cm-3 と求まりました。

固体の比重は、その密度から単位 g cm-3 を取り除いたものにほぼ等しいので、アルミニウムの比重は 2.7 となります。

厳密に比重を求めると、4 ℃ の水の密度 0.999973 g cm-3 で割って、比重は 2.7000729… となりますが、有効数字 2 桁では 2.7 であり、先ほどの結果と同じになります。


鉄の比重は 7.87 である。鉄 1 m3 の質量を計算せよ。

これは、比重から質量を計算する問題です。上式より、固体・液体の密度は、比重に単位として g cm-3 を付け加えたものにほぼ等しいことがわかります。したがって、鉄の密度は 7.87 g cm-3 です。

1 m3 = 106 cm3(=1,000,000 cm3)なので、鉄 1 m3 の質量は次式で計算できます。

\begin{align*} \text{鉄 1 m}^3 \text{の質量} &= 7.87 \text{ g cm}^{-3} \times 10^6 \text{ cm}^{3} \\ &= 7.87 \times 10^6 \text{ g} \\ &= 7.87 \times 10^3 \text{ kg} \\ &= 7.87 \text{ t} \end{align*}

よって、鉄 1 m3の質量は、比重を用いて 7.87 t(トン)と求まりました。