比熱の意味と種々のデータ

比熱とは、単位質量の物質を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のことです。一般に、物質 1 g の温度を 1 ℃ 上昇させるのに必要な熱量(J)のことを言い、単位は J/(g・℃) または J/(g・K) を用います。

例えば、20 ℃ の水の比熱は 4.18 J/(g・K) であり、20 ℃ の乾燥空気の比熱は 1.006 J/(g・K) です。

このページでは、比熱の意味や、定圧比熱と定積比熱の関係を説明しています。また、種々の物質の比熱データを掲載しています。



もくじ

  1. 比熱の意味
    1. 比熱とは
    2. 固体・液体の定圧比熱と定積比熱
    3. 気体の定圧比熱と定積比熱
  2. 比熱のデータ

比熱の意味

比熱とは

比熱とは、一般に 物質 1 g の温度を 1 ℃ 上昇させるのに必要な熱量(J)のことを言います。

質量 m [g] の物質の温度を Δ T [℃ or K] 上昇させるのに必要な熱量が Q [J] であるとき、比熱 c は次式で計算されます。

\[ c = \frac{Q}{ m \Delta T } \]

比熱の単位は、J/(g・K) または、J/(g・℃) となります。ただし、物質 1 mol あたりの比熱であるモル比熱の単位として J/(mol・K)を用いたり、1 cal = 4.184 J(定義) の関係を用いて、cal/(g・K) を用いたりすることもあります。


比熱は、「物質の温度変化のしにくさの度合い」を表しています。比熱の小さい物質ほど、温まりやすく、冷めやすいといえます。

例えば、同じ質量の水と鉄に同じ熱量を加えても、その温度上昇は同じではありません。鉄と水の比熱を比べると、鉄の比熱は 0.45 J/(g・K) 、水の比熱は 4.18 J/(g・K) であるため、鉄の方がはるかに温まりやすく、冷めやすい物質であることが分かります。


上の式より、比熱 c [J/(g・K)] の物質 m [g] の温度を ΔT [K] 上昇させるのに必要な熱量 Q [J] は次式で表されます。

\[ Q = mc \Delta T \]

また、比熱 c [J/(g・K)] の純物質 m [g] の熱容量 C [J/K] は次式で表されます。

\[ C = mc \]


比熱は温度によって変化し、その変化の度合いは条件によって異なります。一定圧力の下で温度変化させた際の比熱を定圧比熱 cp といい、一定体積の下で温度変化させた際の比熱を定積比熱(定容比熱) cv といいます。この2つは固体および液体と、気体では大きく挙動が異なるため、その違いをそれぞれ説明します。

固体・液体の定圧比熱と定積比熱

固体・液体は温度変化に伴う体積変化が非常に小さいため、定圧比熱 cp と定積比熱 cv の差は cv の 3~10 % と、大きくは変わりません。また、液体窒素の沸点に近い -200 ℃ 以下では、両者はほぼ一致することが知られています。

固体や液体を体積一定の下で温度変化させるのは非常に難しいため、定積比熱 cv を測定することはできません。cv の値を得るには、測定された cp の値をもとに、以下の熱力学的に求められた関係式を用いて計算します。

\[ c_p - c_v = \frac{T \alpha^2}{\kappa d} \]

ここで、T は絶対温度、α は体膨張率、$ \kappa $ は圧縮率、d は密度を表します。

気体の定圧比熱と定積比熱

気体は温度変化に伴う体積変化が大きいため、定圧比熱 cp と定積比熱 cv に大きな差が生じます。どちらの値も、直接測定することができます。

理想気体では、内部エネルギーが体積に依存しないことから、次のマイヤーの関係式(Mayer's relationが得られます。

\[ c_p = c_v + \frac{R}{M} \]

ここで M は分子量を表します。

物質 1 mol あたりの比熱である、定圧モル比熱 cm, p および 定積モル比熱 cm, v については、それぞれ、 cm, p = cp M と cm, v = cv M の関係より、次の式が得られます。

\[ c_{m, \,p} = c_{m, \,v} + R \]


ここで、単原子分子理想気体の定圧モル比熱 cm, p を求めてみましょう。

まず、定積変化では気体がする仕事 W = 0 であるため、熱力学第一法則より、Qv = ΔU + W = ΔU となります。次に、単原子分子理想気体の内部エネルギー変化 ΔU は、気体分子運動論より、ΔU = 3/2 nRΔT となります。よって、以下の計算より cm, v = 3/2 R ≈ 12.5 J/(mol・K) となることが分かります。

\begin{align*} c_{m,\, v} &= \frac{Q_v}{n \Delta T} \\[5pt] &= \frac{\Delta U}{n \Delta T} \\[5pt] &= \frac{\frac{3}{2} nR \Delta T}{n \Delta T} \\[5pt] &= \frac{3}{2} R \\[5pt] &\approx 12.5 \text{ J/(mol・K)} \end{align*}

酸素や窒素などの 2 原子分子の場合は、単原子分子のような併進運動に加え、回転運動も行うため、cv の値はより大きく、cm, v = 5/2 R ≈ 20.8 J/(mol・K) となります。

比熱のデータ

種々の物質の比熱の値を、下の表に記しました。

固体の比熱
物質比熱[J/(g・K)]
4.18
メタノール2.55
気体の定圧比熱
物質比熱[J/(g・K)]
乾燥空気(20 ℃)1.006
水素(0 ℃)14.191
酸素(16 ℃)0.922
窒素(16 ℃)1.034
二酸化炭素(16 ℃)0.837
固体の定圧比熱
物質比熱[J/(g・K)]
0.45
0.38
アルミニウム0.90