平方完成のやり方

平方完成とは、一般形で書かれた式 ax2 + bx + c を標準形 a(x-p)2 + q の形に変形することです。2次関数のグラフの頂点と軸を求める場合などに利用します。

平方完成のやり方は、次の 4 ステップです。

このページでは、平方完成のやり方平方完成をする理由を説明しています。また、平方完成の公式も載せています。



もくじ

  1. 平方完成のやり方
  2. 平方完成の公式
  3. 平方完成をする理由

平方完成のやり方

平方完成とは、2次関数の一般形 ax2 + bx + c を標準形 a(x-p)2 + q の形にすることです。

平方完成とは

2次関数の一般形 \[y=ax^2+bx+c\] を、標準形 \[y=a(x-p)^2+q\] の形にすること。

平方完成をするには、次の手順で計算を行います。


ここからは、具体的に次の問題を解くことで、平方完成のやり方を説明していきます。

2次関数

\[ y = 2x^2 + 4x - 3 \]

を平方完成せよ。

ステップ1:x2 の係数でくくる

平方完成の最初のステップでは、x2 と x の項を x2 の係数でくくります。

\begin{align*} y &= 2x^2 + 4x - 3 \\[5pt] &= 2(x^2+2x)-3 \\[5pt] \end{align*}

この問題の式 $y = 2x^2 + 4x - 3$ の x2 の係数は 2 なので、$2x^2 + 4x$ を 2 でくくって、$ y = 2(x^2 + 2x) - 3 $ とします。

ステップ2:括弧でくくられた x の係数の半分の値を使って、平方の形を作る

次のステップではまず、括弧でくくられた x の係数の半分の値を確認します。この問題の場合、ステップ1で変形した式 $ y = 2(x^2 + 2x) - 3 $ の x の係数は 2 なので、その半分の値は 1 ですね。

次に、この値を使って、平方の形を作ります。

\begin{align*} y &= 2\left(x^2+2x\right)-3 \\[5pt] &= 2\left\{\left(x^2+2\cdot1x+1^2\right)-1^2\right\}-3 \\[5pt] &= 2\left\{\left(x+1\right)^2 -1^2\right\}-3 \\[5pt] \end{align*}

上の式で、1 と書かれた部分が、x の係数の半分の値になっています。展開したらもとに戻ることを確認しましょう。


なぜこのような操作をするのでしょうか?上の操作を逆に、下の行から見ていきましょう。

平方完成の目標は最後の行にある $(x+1)^2$ の部分を作って、ここだけに x を含む形にすることです。そのために、2行目では、逆にこれを展開した $\left(x^2+2\cdot1x+1^2\right)$ を作り、1行目の式とつじつまを合わるために、$-1^2$ の項を付け加えて $\left\{\left(x^2+2\cdot1x+1^2\right)-1^2\right\}$ としているのです。こうすることで、式は 1 行目と同じになります。

ステップ3:中括弧 { } を外す

ステップ3では、前のステップで出てきた中括弧 { } を展開して外します。

\begin{align*} y &= 2\left\{\left(x+1\right)^2 -1^2\right\}-3 \\[5pt] &= 2\left(x+1\right)^2 -2 -3 \\[5pt] \end{align*}

ステップ4:定数項を整理する

最後に定数項をまとめて、標準形 a(x-p)2 + q の形にします。

\begin{align*} y &= 2\left(x+1\right)^2 -2 -3 \\[5pt] &= 2\left(x+1\right)^2 -5 \\[5pt] \end{align*}

以上で平方完成が完了し、式を一般形 $y=a(x-p)^2+q$ の形に変形することができました。

つまり、平方完成によって

\begin{align*} y &= 2x^2 + 4x - 3 \\[5pt] &= 2\left(x+1\right)^2 -5 \\[5pt] \end{align*}

とすることができました。


平方完成のやり方を理解できたでしょうか?続いては、上で説明した手順にしたがって平方完成の練習問題を解いてみましょう!

平方完成の練習問題

ここからは、平方完成の基本的な問題を解いていきましょう。上で示した平方完成のやり方の手順にしたがって、計算を行っていきます。

例題 1

$y=x^2+4x$ を平方完成せよ。

まずは簡単な問題から解いてみましょう。

ステップ 1 は「x2 の係数でくくる」ですが、この式の x2 の係数は 1 なので、そのままで OK です。

ステップ 2 は「(括弧でくくられた) x の係数の半分の値を使って、平方の形を作る」です。いま、x の係数は 4 なので、その半分の値は 2 です。これを使って、平方完成の形を作ります。

\begin{align*} y &= x^2+4x \\[5pt] &= \left(x+2\right)^2 -2^2 \\[5pt] &= \left(x+2\right)^2 -4 \\[5pt] \end{align*}

この問題は、以上の手順で平方完成が完了しました。元の式 $y=x^2+4x$ の x2 の係数が 1 だったのでステップ 3 は必要なく、定数項がなかったので、ステップ 4 も必要ありません。

ちなみに、この2次関数の軸は $x=-2$、頂点は $(-2,\, -4)$ です。


例題 2

$y=2x^2+8x$ を平方完成せよ。

ステップ 1「x2 の係数でくくる」より、x2 と x の項を、x2 の係数 2 でくくります。

\begin{align*} y &= 2x^2+8x \\[5pt] &= 2\left(x^2+4x \right) \\[5pt] \end{align*}

ステップ 2 は「括弧でくくられた x の係数の半分の値を使って、平方の形を作る」です。上の式の括弧 ( ) の中の式は、上の例題 1 と同じなので、説明は省略します。式変形は次の通りです。

\begin{align*} y &= 2\left(x^2+4x \right) \\[5pt] &= 2 \left\{ \left(x+2\right)^2 -2^2 \right\} \\[5pt] &= 2 \left\{ \left(x+2\right)^2 -4 \right\} \\[5pt] \end{align*}

ステップ 3 は「中括弧 { } を外す」です。中括弧部分を展開すると、次のようになります。

\begin{align*} y &= 2 \left\{ \left(x+2\right)^2 -4 \right\} \\[5pt] &= 2 \left(x+2\right)^2 -8 \\[5pt] \end{align*}

以上の手順で平方完成が終了しました。元の式 $y=2x^2+8x$ には定数項がなかったので、ステップ 4 は必要ありません。

ちなみに、この2次関数の軸は $x=-2$、頂点は $(-2,\, -8)$ です。

例題 3

$y=2x^2+8x-1$ を平方完成せよ。

この問題は、上の例題 2 に定数項 -1 を付け加えたものです。

まずは、例題 2 と同様の手順で $2x^2+8x$ の部分を変形します。ステップ 1「x2 の係数でくくる」とステップ 2「括弧でくくられた x の係数の半分の値を使って、平方の形を作る」、ステップ 3「中括弧 { } を外す」を使って順に計算すると、次のようになります。

ステップ 3 までの過程では、定数項 $-1$ は残しておきます。

\begin{align*} y &= 2x^2+8x-1 \\[5pt] &= 2\left(x^2+4x \right)-1 \\[5pt] &= 2 \left\{ \left(x+2\right)^2 -2^2 \right\}-1 \\[5pt] &= 2 \left\{ \left(x+2\right)^2 -4 \right\}-1 \\[5pt] &= 2 \left(x+2\right)^2 -8 -1 \\[5pt] \end{align*}

この問題では、元の式に定数項 $-1$ があるので、最後のステップ 4「定数項を整理する」にしたがって、この定数項部分を計算して整理します。

よって、

\begin{align*} y &= 2 \left(x+2\right)^2 -8 -1 \\[5pt] &= 2 \left(x+2\right)^2 -9 \\[5pt] \end{align*}

となり、以上の手順で平方完成が完了しました。

ちなみに、この2次関数の軸は $x=-2$、頂点は $(-2,\quad -9)$ です。

平方完成の公式

一般に、2次関数 y = ax2 + bx + c を平方完成すると、次のようになります。

平方完成の公式

\begin{align*} y &= ax^2+bx+c \\[5pt] &= a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2-4ac}{4a} \end{align*}

ここに示した平方完成の公式を、「平方完成のやり方」の手順に従って証明してみましょう。

\begin{align*} y &= ax^2+bx+c \\[5pt] &= a\left(x+\frac{b}{a}x\right)+c \\[5pt] &= a\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 -\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right\}+c \\[5pt] &= a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2-4ac}{4a} \end{align*}

上の計算では、① x2の係数でくくり、② 平方完成の形を作り、③ 波括弧 { } を外して、④ 定数項を整理する、という手順で公式を証明しています。

この式の軸は直線 $x=-\frac{b}{2a}$、頂点は $\left( -\frac{b}{2a},\, -\frac{b^2-4ac}{4a} \right) $ です。

ここでは文字式を使って平方完成を公式の形で示しました。しかし、実際の計算では a, b, c という文字をこの式に代入するのではなく、上の「平方完成のやり方」で示した手順で計算を進めた方が、効率的です。練習を重ねて、計算に慣れましょう!

平方完成をする理由

平方完成がもっともよく使われるのは、2次関数のグラフを描く場合です。一般形で書かれた式を平方完成して標準形にすることで、軸と頂点を求めることができます。

一般に、標準形で書かれた2次関数のグラフは、$y=ax^2$ のグラフを次のように平行移動したものになります。

平方完成と2次関数のグラフ

$y=a(x-p)^2+q$ のグラフは、$y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$、$y$ 軸方向に $q$ 平行移動したものである。

このグラフの軸は $x = p$、頂点は $(p,\, q)$ である。

例として、2次関数 \[y=2x^2+4x-3\] を考えてみましょう。これを平方完成した式 \[y=2(x+1)^2-5\] のグラフの軸は $x=-1$、頂点は $(-1,\quad -5)$ となります。

この理由を考えていきましょう。

式を詳しく見ると、$(x+1)^2$ の部分は、2乗した値なので、必ず 0 以上の数であることが分かります。$-5$ は定数なので、$2(x+1)^2$ の部分が 0 になるときがこの関数の最小値です。そのような $x$ の値を求めると、$2(x+1)^2=0$ より、$x+1=0$ すなわち $x=-1$ であることが分かります。これが、2次関数の軸と、頂点の x 座標を表しています。このとき、関数の最小値は定数項に等しく -5 なので、頂点の座標は $(1,\, -5)$ と求まりました。

以上のように、平方完成をして一般形に直すことで、2次関数の軸と頂点の座標を簡単に把握できるというメリットがあります。