約数の意味と求め方
約数とは、ある整数や整式に対してそれを割り切ることのできる整数や整式のことです。
このページでは、約数の意味と求め方、そして約数の総和を求める公式について説明しています。
約数を初めて習う小学生向けの解説と、素因数分解を学習した後の中学生以降向けの解説に分かれているので、皆様の学習状況に応じて読み分けてください。
もくじ
約数とは?
約数とは、ある整数や整式に対してそれを割り切ることのできる整数や整式のことです。
例えば、1, 2, 3, 4, 6, 12 はすべて 12 を割り切る数なので、12 の約数です。12 をこれらの数で割って、余りが 0 になることを確認しましょう。
\begin{align*} 12 \div \hphantom{1}1 &= 12 \\[5pt] 12 \div \hphantom{1}2 &= \hphantom{1}6 \\[5pt] 12 \div \hphantom{1}3 &= \hphantom{1}4 \\[5pt] 12 \div \hphantom{1}4 &= \hphantom{1}3 \\[5pt] 12 \div \hphantom{1}6 &= \hphantom{1}2 \\[5pt] 12 \div 12 &= \hphantom{1}1 \\[5pt] \end{align*}
このように、どれも余りが 0 になりましたね。
上に挙げたのは、12 のすべての正の約数です。12 の約数に含まれないものは、例えば 5 があります。その理由は
\begin{align*} 12 \div 5 &= 2\,\text{あまり}\,2 \end{align*}
より、5 は 12 を割り切ることができないからです。
これらは正の約数であり、どれもプラスの数で。しかし、約数に負の数も含まれまるので、中学校で負の数を学習してからは負の約数も考える必要があります。例えば 12 の約数について、上に挙げた正の約数にマイナスを付けた数 -1, -2, -3, -4, -6, -12 も 12 を割り切る数なので、12 の約数となります。
約数の性質としては一般的に、整数 n の約数には n と 1、そして負の数の -n と -1 が必ず含まれます。約数としてこの 4 つしか持たない数を素数といいます。例えば、3 の約数は 3 と 1(そしてこれらにマイナスを付けた -3 と -1)だけなので、3 は素数であることが分かります。
公約数と最大公約数
2つ以上の整数に共通する約数を公約数といいます。また、その公約数のうち最大のものを最大公約数(GCM = greatest common measure)といいます。
例として、次の問題を考えてみましょう。
12 と 18 の正の公約数をすべて求めよ。
12 の正の約数は上で示した通り、1, 2, 3, 4, 6, 12 の 6 つです。18 の約数は 1, 2, 3, 6, 9, 18 の 6 つであることです。
公約数とは、それぞれの整数の約数のうち、すべてに共通して存在するものなので、これを探し出しましょう。
すると、12 の正の約数と 18 の正の約数で共通するものは、1, 2, 3, 6 の 4 つであることが分かりました。したがって、この 4 つが 12 と 18 の正の公約数となります。
そして、最大公約数とは公約数のうち最大のものです。したがって、12 と 18 の最大公約数は 6 です。
以上が公約数と最大公約数の意味となります。
約数の求め方
約数を求めるには、「1 から順番に数え挙げていく方法」と「素因数分解により「求める方法」の 2 通りの方法があります。素因数分解を習うのは中学校なので、小学生のうちは前者の方法を使い、中学生以降は後者の素因数分解による求め方を使うといいでしょう。
ここからは、それぞれの方法で約数を求める手順をご説明していきます。なお、ここでは正の約数のみを考えることにします。
1 から順番に数え挙げていく方法
この方法では、1 から順番に割り切れる数であるかを確かめて、割り切れる場合は左から順番に書き出していきます。割り切れた場合はその商も約数であるので、これを右側から書いていきます。こうすると、約数が小さな順と大きな順の両側から求められます。
具体的に、次の問題を考えましょう。
12 の約数(正の約数)をすべて求めよ。
あてずっぽうに約数を探していると、すべての約数を抜き出せない可能性があるので、手順に従って順番に求めていくことが大事です。
まず、1 で割ることから始めます。12 ÷ 1 = 12 より、12 を割り切れますね。ここで、その商 12 も 12 を割り切る数であることに注目しましょう。これを下のように両側に書きます。
1 の次は 2 で割り切れるかどうかを確かめます。12 ÷ 2 = 6 なので、12 を割り切ることができますね。ここで、その商 6 も 12 を割り切る数であることに注目しましょう。
よって、2 と 6 が 12 の約数であることが分かったので、これらを先ほど求めた 1 と 12 の間の両側に書き加えます。
この後は、同じ手順を続けていくだけです。
2 の次は 3 で割り切れるかどうかを確かめます。12 ÷ 3 = 4 なので、12 を割り切ることができますね。その商 4 も 12 を割り切る数なので、12 の約数です。
先ほど書いた 2 と 6 の間の両側にこの2つの数を書き加えると、次のようになります。
3 の次は 4 で割り切れるかどうか確かめる… といいたいところですが、4 はすでに約数であることが分かっていましたね。よって、これですべての約数を書きだせたことになります。
この方法では、小さな約数を左から順に書きだし、それと同時に大きな約数が右から順に書きだされることになります。両方がぶつかったところで、作業は終了し、すべての約数が求まります。
素因数分解により求める方法
素因数分解によって約数を求めることができます。これは、大きな数の約数を求めるときに非常に役に立つ手段です。
大きな整数の約数を求めるには、上の「1 から順番に約数を求める方法」では、非常に大変な作業になってしまいます。そこで、約数を求める整数を素因数分解してから、すべての約数を書きだす方法を取ります。
例として、上と同じ次の問題を考えましょう。
12 の約数(正の約数)をすべて求めよ。
この方法では、まず素因数分解をします。12 を素因数分解すると、次のようになりますね。
12 = 22 × 3
次に、各素因数について、累乗の指数を 0 から 上の素因数分解で得られた指数まで 1 ずつ増やしたものを考えます。この問題の場合、素因数 2 に対して 20, 21, 22 の 3 つ(素因数分解で得られた 2 の指数は 2 でしたね)、素因数 3 に対して 30, 31 の 2 つ(素因数分解で得られた 3 の指数は 1 でしたね)になります。
最後に、各素因数の累乗値を、素因数ごとの組み合わせ掛けることで、約数を求めます。これが全ての約数になります。これは言葉で説明しても分かりにくいので、下の図を見てみましょう。
例えば、20 × 30 の組み合わせから約数 1 が得られ、20 × 31 の組み合わせから約数 3 が得られます。
このようにして、12 のすべての約数は 1, 2, 3, 4, 6, 12 と求まりました。
約数の個数は、素因数 2 に対して 3 つの累乗値が、素因数 3 に対して 2 つの累乗値の組み合わせがあるので、12 の約数の個数は、2 × 3 = 6(個)ということがわかります。
このように素因数分解によって約数を求める方法は、一見面倒に見えますが、大きな数の約数を求めたり、公約数や最大公約数を求めるときに、威力を発揮する方法です。
約数の総和を求める公式
約数の総和は次の公式で求めることができます。
整数 $n$ を素因数分解すると
\[ n = {p_1}^{a_1} {p_2}^{a_2} \cdots {p_k}^{a_k} \]
となるとき、整数 $n$ の正の約数の総和は次の式で表される。
\[ ({p_1}^0 + {p_2}^1 + \cdots + {p_1}^{a_k})({p_2}^0 + {p_2}^1 + \cdots + {p_2}^{a_k})\cdots \]
公式を見てもよくわかりにくいと思うので、具体的な問題を見てみましょう。
18 の正の約数の総和を求めよ。
まず、答えを確認しておきましょう。18 の約数は 1, 2, 3, 6, 9, 18 の 6 つです。その総和は、1 + 2 + 3 + 6 + 9 + 18 = 39 となります。
次に、公式を使って求めてみましょう。18 を素因数分解すると次のようになります。
18 = 2 × 32
よって、公式において素因数は $p_1 = 2,\, p_2 = 3$ であり、それぞれの指数は $ a_1 = 1 ,\, a_2 =2$ となります。
これらを約数の総和を求める公式に代入すると
\begin{align*} &\hphantom{=} (2^0 + 2^1)(3^0+3^1+3^2) \\[5pt] &= (1+2)(1+3+9) \\[5pt] &= 3 \times 13 \\[5pt] &= 39 \end{align*}
となり、18 の正の約数の総和は 39 と求まりました。