因数分解の公式
因数分解とは、整数または整式を、いくつかの整数もしくは整式の積の形に表すことです。
基本的な因数分解の公式は、次の通りです。二次式の因数分解公式までは中学生で習い、三次式の因数分解公式は高校で学習します。
共通因数のくくり出し
\[ ma + mb = m(a+b) \]
二次式の因数分解公式
\begin{align*} a^2 + 2ab + b^2 &= (a+b)^2 \\[5pt] a^2 - 2ab + b^2 &= (a-b)^2 \\[5pt] a^2 -b^2 &= (a+b)(a-b) \\[5pt] x^2 +(a+b)x +ab &= (x+a)(x+b) \\[5pt] acx^2 +(ad+bc)x +bd &= (ax+b)(cx+d) \\[5pt] \end{align*}
三次式の因数分解公式
\begin{align*} a^3 +b^3 &= (a+b)(a^2 -ab +b^2) \\[5pt] a^3 -b^3 &= (a-b)(a^2 +ab +b^2) \\[5pt] \end{align*}
因数分解公式はすべて、展開公式を逆に見ることで得られます。
このページでは、これらの因数分解公式を使った計算例や、その他の因数分解公式を示しています。
もくじ
共通因数のくくり出し
整式の各項に共通な因数がある場合、それを括弧の外にくくり出して、因数分解することができます。
これは、因数分解の最も基本的な公式です。
共通因数のくくり出し
\[ ma + mb = m(a+b) \]
例題を解いてみましょう。
$x^2y+xy^2$ を因数分解せよ。
$x^2y$ と $xy^2$ の共通因数は $xy$ なので、これを括弧の外にくくり出して因数分解することができます。
\begin{align*} x^2y+xy^2 = xy(x+y) \end{align*}
二次式の因数分解公式
二次式の因数分解公式は次の通りです。これは、中学 3 年生で学習する基本的な公式です。
二次式の因数分解公式
\begin{align*} a^2 + 2ab + b^2 &= (a+b)^2 \\[5pt] a^2 - 2ab + b^2 &= (a-b)^2 \\[5pt] a^2 -b^2 &= (a+b)(a-b) \\[5pt] x^2 +(a+b)x +ab &= (x+a)(x+b) \\[5pt] acx^2 +(ad+bc)x +bd &= (ax+b)(cx+d) \\[5pt] \end{align*}
最後に示した公式
\[acx^2 +(ad+bc)x +bd = (ax+b)(cx+d)\]
を利用して因数分解する方法を、一般にたすき掛けの方法といいます。
それでは例題を解いてみましょう。
$x^2 + 6x +9$ を因数分解せよ。
2 乗して 9 になる数は 3 で、3 の 2 乗は 9 になるので、上に挙げた因数分解公式のうち 1 番目の式 $a^2 + 2ab + b^2 = (a+b)^2$ を利用して因数分解できます。
公式の a に x を、b に 3 を 当てはめると、
\begin{align*} x^2 + 6x +9 &= x^2 + 2\times x\times 3 + 3^2 \\[5pt] &= (x+3)^2 \end{align*}
と因数分解できました。
$x^2 - 64$ を因数分解せよ。
2 乗して 64 になる数は 8 なので、上に挙げた因数分解公式のうち 3 番目の式 $a^2 -b^2 = (a+b)(a-b)$ を利用して因数分解できます。
\begin{align*} x^2 - 64 &= x^2 - 8^2 \\[5pt] &= (x+8)(x-8) \end{align*}
と因数分解できました。
$x^2 + 6x + 8$ を因数分解せよ。
この式は、上に挙げた因数分解公式の 1 番目から 3 番目の式の形には当てはまらないので、 4 番目の式 $x^2 +(a+b)x +ab = (x+a)(x+b)$ を利用します。
公式の a と b に当てはまる数は、和が 6、積が 8 になる 2 つの数です。6 と 8 というのはそれぞれ、x の係数(= 6)と定数項(= 8)の値です。
このような数の組は、2 と 4 なので、公式の a と b にはそれぞれ、この 2 つの数が当てはまります。あとは公式に代入することで、因数分解できます。
\begin{align*} x^2 + 6x + 8 &= x^2 + (2+4)x + 2\times 4 \\[5pt] &= (x+2)(x+4) \end{align*}
と因数分解できました。
高校レベルの因数分解公式として、次の公式があります。
\[ a^2 +b^2 +c^2 + 2ab + 2bc +2ca = (a+b+c)^2 \]
以上が、二次式の因数分解公式とその使い方の例でした。
三次式の因数分解公式
三次式の基本的な因数分解公式は次の通りです。これは高校で学習します。
三次式の因数分解公式(基本)
\begin{align*} a^3 +b^3 &= (a+b)(a^2 -ab +b^2) \\[5pt] a^3 -b^3 &= (a-b)(a^2 +ab +b^2) \\[5pt] \end{align*}
少し発展的な公式もあります。
三次式の因数分解公式(発展)
\begin{align*} a^3 +3a^2b +3ab^2 +b^3 &= (a+b)^3 \\[5pt] a^3 -3a^2b +3ab^2 -b^3 &= (a-b)^3 \\[5pt] \end{align*}\begin{align*} a^3 &+b^3 +c^3 -3abc \\[2pt] &= (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \\[5pt] \end{align*}
これでは、これらの公式を用いて、例題を解いてみましょう。
$x^3 + 8$ を因数分解せよ。
$8 =2^3$ なので、因数分解公式 $a^3 +b^3 = (a+b)(a^2 -ab +b^2)$ において、$a=x, \,b=2$ を当てはめることで、因数分解できます。
\begin{align*} x^3 + 8 &= x^3 +2^3 \\[5pt] &= (x+2)(x^2-x\cdot 2+2^2) \\[5pt] &= (x+2)(x^2-2x+4) \\[5pt] \end{align*}
次の問題はちょっと難しいです…!
$(x-y)^3+(y-z)^3+(z-x)^3$ を因数分解せよ。
発展的な因数分解公式として挙げた
\begin{align*} a^3 &+b^3 +c^3 -3abc \\[2pt] &= (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \end{align*}
の $-3abc$ を右辺に移項した
\begin{align*} a^3 &+b^3 +c^3 \\[2pt] &= (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) +3abc \end{align*}
を利用します。
$x-y=a,\,y-z=b,\,z-x=c$ とおくと、
\begin{align*} a&+b+c \\[2pt] &=(x-y)+(y-z)+(z-x) =0 \end{align*}
となることに注目すると、この問題を解くことができます。
\begin{align*} (x&-y)^3+(y-z)^3+(z-x)^3 \\[2pt] &= a^3 + b^3 +c^3 \\[5pt] &= \underbrace{(a+b+c)}_{=0}(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) +3abc \\[5pt] &= 3abc \\[5pt] &= 3(x-y)(y-z)(z-x) \end{align*}
最後に、置き換えた$a,\,b,\,c$ の値をもとに戻すと、$3(x-y)(y-z)(z-x)$ の形に因数分解することができました。
以上が、三次式の因数分解公式とその使い方の例でした。