対数 log の公式と計算
対数 log の公式とその導出方法、そしてこれらの公式を使った計算例について、ご説明します。
はじめに、log の定義と公式を一覧で示し、そのあとで各項目を詳しく説明していきます。
もくじ
対数 log の公式
以下に、対数 log の定義と性質、公式を示します。
対数の定義
\begin{align*} a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \log_a M=p \, \Longleftrightarrow\, a^p = M \end{align*}
\[ a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0,\, N\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \]
対数の性質
\begin{align*} \log_a1 &=0 \\[5pt] \log_aa &= 1 \\[5pt] \end{align*}
積の対数 \[ \log_aMN = \log_aM + \log_aN \]
商の対数 \[ \log_a\frac{M}{N} = \log_aM-\log_aN \]
累乗の対数 \[ \log_aM^r = r\log_aM \quad (r\,\text{は実数}) \]
底の変換公式
\[ a,\,b,\, c\, \text{が正の整数で、} a\neq 1,\, c\neq 1 \text{のとき} \]
\begin{align*} \log_ab &= \frac{\log_cb}{\log_ca} \end{align*}
それぞれの公式について、その導出方法と計算例を確認していきましょう。
対数の定義
定義
対数は次のように定義され、記号 log を用いて表されます。
$M=a^p\quad (a\neq 1,\, a\gt0,\, M\gt 0)$ という関係があるとき、$p$ を $a$ を底(てい)とする $M$ の対数といい、$p=\log_aM$ と表す。
$M$ を 対数 $p$ の真数という。
この定義を簡潔に表すと、次のようになります。
\begin{align*} a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \log_a M=p \, \Longleftrightarrow\, a^p = M \end{align*}
記号 log は、対数を意味する logarithmに由来しています。
計算例
定義に沿って、簡単な対数計算をしてみましょう。記号の意味を言葉に置き換えて考えると、楽に理解できますよ。
log28 の値を求めよ。
log という記号の意味を考えると、この問題は「2 を何乗すると 8 になりますか?」と、問われていることになります。何乗でしょうか… 2 を 1乗すると 2、2乗すると 4、3乗すると 8 ... はい!3乗ですね!
すなわち、$2^3=8$ なので、$\log_28=3$ となります。
log10100 の値を求めよ。
前の問題同様に、log という記号の意味を考えると、この問題は「10 を何乗すると 100 になりますか?」と、問われていることになります。1乗、2乗...はい!2乗ですね!
すなわち、$10^2=100$ なので、$\log_{10}100=2$ となります。
対数の基本性質
対数の基本的な性質として、次の式が得られます。
対数の性質
\begin{align*} \log_a1 &=0 \\[5pt] \log_aa &= 1 \\[5pt] \end{align*}
この2つの式は、次の指数の定義・性質により得られます。
$a^0=1$ より $\log_a1=0$
$a^1=a$ より $\log_aa=1$
積・商・累乗の対数
公式と導出
積・商・累乗の対数は、次の公式によって対数の和や差、積の形に変形することができます。
\[ a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0,\, N\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \]
積の対数 \[ \log_aMN = \log_aM + \log_aN \]
商の対数 \[ \log_a\frac{M}{N} = \log_aM-\log_aN \]
累乗の対数 \[ \log_aM^r = r\log_aM \quad (r\,\text{は実数}) \]
それぞれの公式の導出方法を確認しましょう。これらの対数の公式は、指数法則から得ることができます。
積の対数
$\log_aM=p ,\, \log_aN=q$ とおくと、対数の定義より
\[ M=a^p ,\, N=a^q \]
この辺々を掛け合わせて
\[ MN=a^pa^q = a^{p+q} \]
a を底とする両辺の対数をとると
\begin{align*} \log_aMN &= p+q \\[5pt] &= \log_aM+\log_aN \end{align*}
となり、「積の対数」と「対数の和」の変換公式を証明できました。すなわち、真数の積は、対数の和の形にできます。
商の対数
上で示した積の対数と同様の手順で証明します。
$\log_aM=p ,\, \log_aN=q$ とおくと、対数の定義より
\[ M=a^p ,\, N=a^q \]
この辺々の商をとると
\[ \frac{M}{N}=\frac{a^p}{a^q} = a^{p-q} \]
a を底とする両辺の対数をとると
\begin{align*} \log_a\frac{M}{N} &= p-q \\[5pt] &= \log_aM-\log_aN \end{align*}
となり、「商の対数」と「対数の差」の変換公式を証明できました。すなわち、真数の商は、対数の差の形にできます。
累乗の対数
$\log_aM=p$ とおくと、対数の定義より
\[ M=a^p \]
この両辺を r 乗すると
\[ M^r = a^{pr} \]
a を底とする両辺の対数をとると
\[ \log_aM^r = pr = r\log_aM \]
となり、公式を証明することができました。すなわち、対数の真数部分の指数は、log の前に出して対数との積の形にできます。
なお、上の3つの公式の特別な場合として、次の公式が成り立ちます。
\begin{align*} \log_aa^p &=p \\[5pt] \log_a\frac{1}{N} &=-\log_aN \\[5pt] \log_a\sqrt[n]{M} &= \frac{1}{n}\log_aM \\ \end{align*}
計算例
次の計算をせよ
\[ \log_2\frac{4}{3} + \log_{2}24\]
上で証明した公式を用いて、対数の和を、積の対数の形に直してから計算を進めます。
\begin{align*} \log_2\frac{4}{3} + \log_{2}24 &= \log_2\left( \frac{4}{3}\times 24 \right) \\[5pt] &= \log_{2}32 \\[5pt] &= \log_{2}2^5 \\[5pt] &= 5 \end{align*}
次の計算をせよ
\[ 6\log_3\sqrt{6} - \log_{3}8\]
上で証明した公式を用いて、対数にかかっている数 6 を真数の指数部分に持っていきます。続いて、対数の差を商の対数に直して計算します。
\begin{align*} 6\log_3\sqrt{6} - \log_{3}8 &= \log_3\left(6^\frac{1}{2}\right)^6 - \log_{3}2^3 \\[5pt] &= \log_{3}\frac{6^3}{2^3} \\[5pt] &= \log_{3}3^3 \\[5pt] &= 3 \end{align*}
底の変換公式
底の変換公式は、底が異なる対数の底をそろえてから計算するときに、よく用いられる公式です。
公式と導出
対数には、底を変換する次の公式が成り立ちます。
底の変換公式
\[ a,\,b,\, c\, \text{が正の整数で、} a\neq 1,\, c\neq 1 \text{のとき} \]
\begin{align*} \log_ab &= \frac{\log_cb}{\log_ca} \end{align*}
底の変換公式より、次の等式が成り立つことがわかります。
\[ a,\,b\, \text{が正の整数で、} a\neq 1,\, b\neq 1 \text{のとき} \]
\begin{align*} \log_ab &= \frac{1}{\log_ba} \end{align*}
それでは、公式の導出方法を確認しましょう。
公式の導出
$ \log_ab=p $ とおくと、対数の定義より
\[ a^p=b \]
c を底とする両辺の対数をとると
\[ \log_ca^p = \log_cb \]
よって
\[ p\log_ca = \log_cb \]
$a\neq 1$ より $\log_ca \neq 0$ であるから
\[ p=\frac{\log_cb}{\log_ca} \]
すなわち
\[ \log_ab = \frac{\log_cb}{\log_ca} \]
以上より、底の変換公式を証明できました。
計算例
次の式を計算せよ。
\[ \log_{4}{8} \]
底の変換公式を使って(1行目)計算します。
\begin{align*} \log_{4}{8} &= \frac{\log_{2}{8}}{\log_{2}{4}} \\[5pt] &= \frac{\log_{2}{2^3}}{\log_{2}{2^2}} \\[5pt] &= \frac{3\log_{2}{2}}{2\log_{2}{2}} \\[5pt] &= \frac{3}{2} \\[5pt] \end{align*}
次の式を計算せよ。
\[ \log_{2}{5}\cdot\log_{5}{2} \]
底の変換公式を使って、対数の底をそろえてから計算します。
\begin{align*} \log_{2}{5}\cdot\log_{5}{2} &= \log_{2}{5}\cdot\frac{\log_{2}{2}}{\log_{2}{5}} \\[5pt] &= \log_{2}{2} \\[5pt] &= 1 \\[5pt] \end{align*}