対数 log の公式と計算

対数 log の公式とその導出方法、そしてこれらの公式を使った計算例について、ご説明します。

はじめに、log の定義と公式を一覧で示し、そのあとで各項目を詳しく説明していきます。



もくじ

  1. 対数 log の公式
  2. 対数の定義
  3. 対数の基本性質
  4. 積・商・累乗の対数
  5. 底の変換公式

対数 log の公式

以下に、対数 log の定義と性質、公式を示します。

対数の定義

\begin{align*} a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \log_a M=p \, \Longleftrightarrow\, a^p = M \end{align*}

\[ a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0,\, N\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \]

対数の性質

\begin{align*} \log_a1 &=0 \\[5pt] \log_aa &= 1 \\[5pt] \end{align*}

積の対数 \[ \log_aMN = \log_aM + \log_aN \]

商の対数 \[ \log_a\frac{M}{N} = \log_aM-\log_aN \]

累乗の対数 \[ \log_aM^r = r\log_aM \quad (r\,\text{は実数}) \]

底の変換公式

\[ a,\,b,\, c\, \text{が正の整数で、} a\neq 1,\, c\neq 1 \text{のとき} \]

\begin{align*} \log_ab &= \frac{\log_cb}{\log_ca} \end{align*}

それぞれの公式について、その導出方法と計算例を確認していきましょう。

対数の定義

定義

対数は次のように定義され、記号 log を用いて表されます。

$M=a^p\quad (a\neq 1,\, a\gt0,\, M\gt 0)$ という関係があるとき、$p$ を $a$ を底(てい)とする $M$ の対数といい、$p=\log_aM$ と表す。

$M$ を 対数 $p$ の真数という。

この定義を簡潔に表すと、次のようになります。

\begin{align*} a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \log_a M=p \, \Longleftrightarrow\, a^p = M \end{align*}

記号 log は、対数を意味する logarithmに由来しています。

計算例

定義に沿って、簡単な対数計算をしてみましょう。記号の意味を言葉に置き換えて考えると、楽に理解できますよ。

log28 の値を求めよ。

log という記号の意味を考えると、この問題は「2 を何乗すると 8 になりますか?」と、問われていることになります。何乗でしょうか… 2 を 1乗すると 2、2乗すると 4、3乗すると 8 ... はい!3乗ですね!

すなわち、$2^3=8$ なので、$\log_28=3$ となります。

log10100 の値を求めよ。

前の問題同様に、log という記号の意味を考えると、この問題は「10 を何乗すると 100 になりますか?」と、問われていることになります。1乗、2乗...はい!2乗ですね!

すなわち、$10^2=100$ なので、$\log_{10}100=2$ となります。

対数の基本性質

対数の基本的な性質として、次の式が得られます。

対数の性質

\begin{align*} \log_a1 &=0 \\[5pt] \log_aa &= 1 \\[5pt] \end{align*}

この2つの式は、次の指数の定義・性質により得られます。

$a^0=1$ より $\log_a1=0$

$a^1=a$ より $\log_aa=1$

積・商・累乗の対数

公式と導出

積・商・累乗の対数は、次の公式によって対数の和や差、積の形に変形することができます。

\[ a\gt 0,\, a \neq1 ,\, M\gt 0,\, N\gt 0 \text{のとき} \\[5pt] \]

積の対数 \[ \log_aMN = \log_aM + \log_aN \]

商の対数 \[ \log_a\frac{M}{N} = \log_aM-\log_aN \]

累乗の対数 \[ \log_aM^r = r\log_aM \quad (r\,\text{は実数}) \]

それぞれの公式の導出方法を確認しましょう。これらの対数の公式は、指数法則から得ることができます。

積の対数

$\log_aM=p ,\, \log_aN=q$ とおくと、対数の定義より

\[ M=a^p ,\, N=a^q \]

この辺々を掛け合わせて

\[ MN=a^pa^q = a^{p+q} \]

a を底とする両辺の対数をとると

\begin{align*} \log_aMN &= p+q \\[5pt] &= \log_aM+\log_aN \end{align*}

となり、「積の対数」と「対数の和」の変換公式を証明できました。すなわち、真数の積は、対数の和の形にできます。

商の対数

上で示した積の対数と同様の手順で証明します。

$\log_aM=p ,\, \log_aN=q$ とおくと、対数の定義より

\[ M=a^p ,\, N=a^q \]

この辺々の商をとると

\[ \frac{M}{N}=\frac{a^p}{a^q} = a^{p-q} \]

a を底とする両辺の対数をとると

\begin{align*} \log_a\frac{M}{N} &= p-q \\[5pt] &= \log_aM-\log_aN \end{align*}

となり、「商の対数」と「対数の差」の変換公式を証明できました。すなわち、真数の商は、対数の差の形にできます。

累乗の対数

$\log_aM=p$ とおくと、対数の定義より

\[ M=a^p \]

この両辺を r 乗すると

\[ M^r = a^{pr} \]

a を底とする両辺の対数をとると

\[ \log_aM^r = pr = r\log_aM \]

となり、公式を証明することができました。すなわち、対数の真数部分の指数は、log の前に出して対数との積の形にできます。

なお、上の3つの公式の特別な場合として、次の公式が成り立ちます。

\begin{align*} \log_aa^p &=p \\[5pt] \log_a\frac{1}{N} &=-\log_aN \\[5pt] \log_a\sqrt[n]{M} &= \frac{1}{n}\log_aM \\ \end{align*}

計算例

次の計算をせよ

\[ \log_2\frac{4}{3} + \log_{2}24\]

上で証明した公式を用いて、対数の和を、積の対数の形に直してから計算を進めます。

\begin{align*} \log_2\frac{4}{3} + \log_{2}24 &= \log_2\left( \frac{4}{3}\times 24 \right) \\[5pt] &= \log_{2}32 \\[5pt] &= \log_{2}2^5 \\[5pt] &= 5 \end{align*}

次の計算をせよ

\[ 6\log_3\sqrt{6} - \log_{3}8\]

上で証明した公式を用いて、対数にかかっている数 6 を真数の指数部分に持っていきます。続いて、対数の差を商の対数に直して計算します。

\begin{align*} 6\log_3\sqrt{6} - \log_{3}8 &= \log_3\left(6^\frac{1}{2}\right)^6 - \log_{3}2^3 \\[5pt] &= \log_{3}\frac{6^3}{2^3} \\[5pt] &= \log_{3}3^3 \\[5pt] &= 3 \end{align*}

底の変換公式

底の変換公式は、底が異なる対数の底をそろえてから計算するときに、よく用いられる公式です。

公式と導出

対数には、底を変換する次の公式が成り立ちます。

底の変換公式

\[ a,\,b,\, c\, \text{が正の整数で、} a\neq 1,\, c\neq 1 \text{のとき} \]

\begin{align*} \log_ab &= \frac{\log_cb}{\log_ca} \end{align*}

底の変換公式より、次の等式が成り立つことがわかります。

\[ a,\,b\, \text{が正の整数で、} a\neq 1,\, b\neq 1 \text{のとき} \]

\begin{align*} \log_ab &= \frac{1}{\log_ba} \end{align*}

それでは、公式の導出方法を確認しましょう。

公式の導出

$ \log_ab=p $ とおくと、対数の定義より

\[ a^p=b \]

c を底とする両辺の対数をとると

\[ \log_ca^p = \log_cb \]

よって

\[ p\log_ca = \log_cb \]

$a\neq 1$ より $\log_ca \neq 0$ であるから

\[ p=\frac{\log_cb}{\log_ca} \]

すなわち

\[ \log_ab = \frac{\log_cb}{\log_ca} \]

以上より、底の変換公式を証明できました。

計算例

次の式を計算せよ。

\[ \log_{4}{8} \]

底の変換公式を使って(1行目)計算します。

\begin{align*} \log_{4}{8} &= \frac{\log_{2}{8}}{\log_{2}{4}} \\[5pt] &= \frac{\log_{2}{2^3}}{\log_{2}{2^2}} \\[5pt] &= \frac{3\log_{2}{2}}{2\log_{2}{2}} \\[5pt] &= \frac{3}{2} \\[5pt] \end{align*}

次の式を計算せよ。

\[ \log_{2}{5}\cdot\log_{5}{2} \]

底の変換公式を使って、対数の底をそろえてから計算します。

\begin{align*} \log_{2}{5}\cdot\log_{5}{2} &= \log_{2}{5}\cdot\frac{\log_{2}{2}}{\log_{2}{5}} \\[5pt] &= \log_{2}{2} \\[5pt] &= 1 \\[5pt] \end{align*}