偏微分の意味とやり方
もくじ
偏微分の意味と記号
偏微分とは、$n$ 変数関数 $f(x_1,\,x_2,\,\cdots,\, x_n)$ の変数のうち、ある一つの変数 $x_i$ 以外の $n-1$ 個の変数の値を固定することで、$f$ を $x_i$ だけの関数とみて、この関数を $x_i$ について微分することです。このような操作を「関数 $f$ を $x_i$ で偏微分する」といいます。
偏微分によって得られる微分係数と導関数のことをそれぞれ、変数 $x_i$ に関する偏微分係数、偏導関数といいます。
それでは、偏微分のやり方を説明する前に、偏微分の記号を学習しておきましょう!
偏微分の記号
関数 $z=f(x,\,y)$ を $x$ で偏微分した偏導関数を、次の記号で表します。偏微分の表し方は複数あり、下には 4 通りの記号を示しました。
\begin{align*} f_x(x,\,y) ,\; z_x ,\; \frac{\partial f}{\partial x}(x,\,y) ,\; \frac{\partial z}{\partial x} \end{align*}
関数 $z=f(x,\,y)$ を $y$ で偏微分した偏導関数も同様に、次のように書きます(4 通り)。
\begin{align*} f_y(x,\,y) ,\; z_y ,\; \frac{\partial f}{\partial y}(x,\,y) ,\; \frac{\partial z}{\partial y} \end{align*}
次に、2 次の偏導関数の記号について説明します。
関数 $z=f(x,\,y)$ の $x$ に関する偏導関数 $z_x=f_x(x,\,y)=\frac{\partial f}{\partial x}$ が $y$ について偏微分可能なとき、$(f_x)_y = (z_x)_y=\frac{\partial}{\partial y}\left( \frac{\partial f}{\partial x} \right) = \frac{\partial}{\partial y}\left( \frac{\partial z}{\partial x} \right)$ を次のように書きます(4 通り)。
\begin{align*} f_{xy}(x,\,y) ,\; z_{xy} ,\; \frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x}(x,\,y) ,\; \frac{\partial^2 z}{\partial y \partial x} ,\; \end{align*}
また、$f_x$ が $x$ で偏微分可能なとき、$(f_x)_x$ を次のように書きます(4 通り)。
\begin{align*} f_{xx}(x,\,y) ,\; z_{xx} ,\; \frac{\partial^2 f}{\partial^2 x}(x,\,y) ,\; \frac{\partial^2 z}{\partial^2 x} ,\; \end{align*}
$f_{yx}$ や $f_{yy}$ についても、これらと同様に書きます。
ここまで、偏微分の定義と記号を説明しました。続いて、この説明をもとに、偏微分のやり方を説明します。
偏微分のやり方
偏微分をするには、偏微分する一つの変数を除く、他のすべての変数を定数とみて微分します。具体的な偏微分のやり方は、1 変数の微分のやり方が分かっていれば難しくありません。
例として、次の問題に示した 2 変数関数を偏微分してみましょう。
2 変数関数 \[f(x,\,y)=x^2y+3xy^5+x^3\] を、変数 x と y のそれぞれで偏微分せよ。
まずは、変数 x で偏微分するときの計算方法を説明します。変数 x で偏微分するには、他の変数、この問題では変数 y を定数とみて、関数を x で微分します。
分かりやすいように、問題に示された関数で「定数とみる部分」を括弧でくくってみましょう。
\begin{align*} f(x,\,y)&=x^2y+3xy^5+x^3 \\[5pt] &=(y)x^2+(3y^5)x+x^3 \\[5pt] \end{align*}
上の式で括弧で囲った部分は定数とみて、この式を $x$ で微分すれば、それは $x$ で偏微分したことになります。
\begin{align*} f_x(x,\,y) &= (y)\cdot 2x+(3y^5)\cdot 1+3x^2 \\[5pt] &=2xy+3y^5+3x^2 \end{align*}
同様に、同じ関数 $f(x,\,y)=x^2y+3xy^5+x^3$ を変数 y で偏微分してみましょう。先ほどと同様に、定数として扱う部分を括弧でくくってから計算すると、次のようになります。
\begin{align*} f(x,\,y)&=x^2y+3xy^5+x^3 \\[5pt] &=(x^2)y+(3x)y^5+(x^3) \\[5pt] \end{align*}
より
\begin{align*} f_y(x,\,y)&=(x^2)\cdot 1+(3x)\cdot 5y^4+0 \\[5pt] &=x^2+15xy^4 \\[5pt] \end{align*}
偏微分のやり方を理解できたでしょうか?微分のやり方が分かっていれば難しいものではないですね。
偏微分可能性
ある領域の各点にて、関数 $f$ の全ての変数に対する偏導関数が定義できるとき、その領域において関数 $f$ は偏微分可能であるといいます。
偏微分可能とは、次のことを言います。
偏微分可能
関数 $f(x,\,y)$ が点 $(a,\,b)$ において、$x$ に関して偏微分可能であるとは、$y=b$(定数) とおいて得られる $x$ の関数 $f(x,\,b)$ が $x=a$ において微分可能であることである。
それでは、偏微分可能性について、具体的な関数のグラフを見ながら確認してみましょう。
下に示したのは、関数 $z=f(x,\,y)=x^2-y^2$ の曲面です。
まずは、変数 $x$ に関しての偏微分を考えましょう。
そのために、変数 $y$ を定数とします。下の図には、例として変数 y の値を $y=-4$ にしたグラフを示しています(橙色の曲線)。この曲線 $f(x,\,-4)$ は、関数 $f$ を平面 $y=-4$ で切った切り口です。
平面 $y=-4$ で切った切り口の曲線は、$z=f(x,\,-4)=x^2-16$ と表すことができます。これは、式の形を見て分かる通り、2 次関数となっています。2 次関数は全ての点において微分可能(連続でなめらか)な関数なので、関数 $f(x,\,-4)$ は全実数 $x$ で微分可能です。
いまは、変数 $y$ を $y=-4$ に固定しましたが、$y$ をどのような定数としても、それによって得られる $x$ の関数は 2 次関数であるため、微分可能です。よって、この関数 $f$ は全実数 $x$ に関して偏微分可能であることが分かりました。
同様に、変数 $y$ でも偏微分可能であることを確認しましょう。
関数 $f(x,\,y)=x^2-y^2$ の 変数 $x$ を $x=a$ に固定すると、その式は $f(a,\,y)=a^2-y^2$ となります。これも 2 次関数であるため、全実数 $y$ で偏微分可能です。
以上より、関数 $f(x,\,y)=x^2-y^2$ は全実数 $x,\,y$ で偏微分可能であることが確認できました。