偏微分の意味とやり方

偏微分とは、n 変数関数 f(x1, x2, …, xn) のある一つの変数 xi 以外の n-1 個の変数の値を固定することで、f を xi だけの関数とみて、この関数を xi について微分することです。

このページでは、偏微分の意味と記号やり方偏微分可能性について分かりやすく説明しています。


もくじ

  1. 偏微分の意味と記号
  2. 偏微分のやり方
  3. 偏微分可能性

偏微分の意味と記号

偏微分とは、$n$ 変数関数 $f(x_1,\,x_2,\,\cdots,\, x_n)$ の変数のうち、ある一つの変数 $x_i$ 以外の $n-1$ 個の変数の値を固定することで、$f$ を $x_i$ だけの関数とみて、この関数を $x_i$ について微分することです。このような操作を「関数 $f$ を $x_i$ で偏微分する」といいます。

偏微分によって得られる微分係数と導関数のことをそれぞれ、変数 $x_i$ に関する偏微分係数、偏導関数といいます。


それでは、偏微分のやり方を説明する前に、偏微分の記号を学習しておきましょう!

偏微分の記号

関数 $z=f(x,\,y)$ を $x$ で偏微分した偏導関数を、次の記号で表します。偏微分の表し方は複数あり、下には 4 通りの記号を示しました。

\begin{align*} f_x(x,\,y) ,\; z_x ,\; \frac{\partial f}{\partial x}(x,\,y) ,\; \frac{\partial z}{\partial x} \end{align*}

関数 $z=f(x,\,y)$ を $y$ で偏微分した偏導関数も同様に、次のように書きます(4 通り)。

\begin{align*} f_y(x,\,y) ,\; z_y ,\; \frac{\partial f}{\partial y}(x,\,y) ,\; \frac{\partial z}{\partial y} \end{align*}


次に、2 次の偏導関数の記号について説明します。

関数 $z=f(x,\,y)$ の $x$ に関する偏導関数 $z_x=f_x(x,\,y)=\frac{\partial f}{\partial x}$ が $y$ について偏微分可能なとき、$(f_x)_y = (z_x)_y=\frac{\partial}{\partial y}\left( \frac{\partial f}{\partial x} \right) = \frac{\partial}{\partial y}\left( \frac{\partial z}{\partial x} \right)$ を次のように書きます(4 通り)。

\begin{align*} f_{xy}(x,\,y) ,\; z_{xy} ,\; \frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x}(x,\,y) ,\; \frac{\partial^2 z}{\partial y \partial x} ,\; \end{align*}

また、$f_x$ が $x$ で偏微分可能なとき、$(f_x)_x$ を次のように書きます(4 通り)。

\begin{align*} f_{xx}(x,\,y) ,\; z_{xx} ,\; \frac{\partial^2 f}{\partial^2 x}(x,\,y) ,\; \frac{\partial^2 z}{\partial^2 x} ,\; \end{align*}

$f_{yx}$ や $f_{yy}$ についても、これらと同様に書きます。

ここまで、偏微分の定義と記号を説明しました。続いて、この説明をもとに、偏微分のやり方を説明します。

偏微分のやり方

偏微分をするには、偏微分する一つの変数を除く、他のすべての変数を定数とみて微分します。具体的な偏微分のやり方は、1 変数の微分のやり方が分かっていれば難しくありません。

例として、次の問題に示した 2 変数関数を偏微分してみましょう。

2 変数関数 \[f(x,\,y)=x^2y+3xy^5+x^3\] を、変数 x と y のそれぞれで偏微分せよ。

まずは、変数 x で偏微分するときの計算方法を説明します。変数 x で偏微分するには、他の変数、この問題では変数 y を定数とみて、関数を x で微分します。

分かりやすいように、問題に示された関数で「定数とみる部分」を括弧でくくってみましょう。

\begin{align*} f(x,\,y)&=x^2y+3xy^5+x^3 \\[5pt] &=(y)x^2+(3y^5)x+x^3 \\[5pt] \end{align*}

上の式で括弧で囲った部分は定数とみて、この式を $x$ で微分すれば、それは $x$ で偏微分したことになります。

\begin{align*} f_x(x,\,y) &= (y)\cdot 2x+(3y^5)\cdot 1+3x^2 \\[5pt] &=2xy+3y^5+3x^2 \end{align*}

同様に、同じ関数 $f(x,\,y)=x^2y+3xy^5+x^3$ を変数 y で偏微分してみましょう。先ほどと同様に、定数として扱う部分を括弧でくくってから計算すると、次のようになります。

\begin{align*} f(x,\,y)&=x^2y+3xy^5+x^3 \\[5pt] &=(x^2)y+(3x)y^5+(x^3) \\[5pt] \end{align*}

より

\begin{align*} f_y(x,\,y)&=(x^2)\cdot 1+(3x)\cdot 5y^4+0 \\[5pt] &=x^2+15xy^4 \\[5pt] \end{align*}

偏微分のやり方を理解できたでしょうか?微分のやり方が分かっていれば難しいものではないですね。

偏微分可能性

ある領域の各点にて、関数 $f$ の全ての変数に対する偏導関数が定義できるとき、その領域において関数 $f$ は偏微分可能であるといいます。

偏微分可能とは、次のことを言います。

偏微分可能

関数 $f(x,\,y)$ が点 $(a,\,b)$ において、$x$ に関して偏微分可能であるとは、$y=b$(定数) とおいて得られる $x$ の関数 $f(x,\,b)$ が $x=a$ において微分可能であることである。

それでは、偏微分可能性について、具体的な関数のグラフを見ながら確認してみましょう。

下に示したのは、関数 $z=f(x,\,y)=x^2-y^2$ の曲面です。

関数 z=f(x, y)=x^2-y^2 のグラフ(曲面)
関数 $z=f(x,\,y)=x^2-y^2$ のグラフ(曲面)

まずは、変数 $x$ に関しての偏微分を考えましょう。

そのために、変数 $y$ を定数とします。下の図には、例として変数 y の値を $y=-4$ にしたグラフを示しています(橙色の曲線)。この曲線 $f(x,\,-4)$ は、関数 $f$ を平面 $y=-4$ で切った切り口です。

関数 z=f(x, y)=x^2-y^2 の曲面と、平面 y=-4 におけるその切り口の曲線
関数 $z=f(x,\,y)=x^2-y^2$ の曲面と、平面 $y=-4$ におけるその切り口の曲線

平面 $y=-4$ で切った切り口の曲線は、$z=f(x,\,-4)=x^2-16$ と表すことができます。これは、式の形を見て分かる通り、2 次関数となっています。2 次関数は全ての点において微分可能(連続でなめらか)な関数なので、関数 $f(x,\,-4)$ は全実数 $x$ で微分可能です。

いまは、変数 $y$ を $y=-4$ に固定しましたが、$y$ をどのような定数としても、それによって得られる $x$ の関数は 2 次関数であるため、微分可能です。よって、この関数 $f$ は全実数 $x$ に関して偏微分可能であることが分かりました。

関数 f を平面 y=b で切った切り口 z=f(x, b)=x^2-b^2 において、定数 b をいくつか選んで描いたグラフ(全ての曲線は全実数 x で微分可能な 2 次関数である)
関数 $f$ を平面 $y=b$ で切った切り口 $z=f(x,\,b)=x^2-b^2$ において、定数 $b$ をいくつか選んで描いたグラフ(全ての曲線は全実数 $x$ で微分可能な 2 次関数である)

同様に、変数 $y$ でも偏微分可能であることを確認しましょう。

関数 $f(x,\,y)=x^2-y^2$ の 変数 $x$ を $x=a$ に固定すると、その式は $f(a,\,y)=a^2-y^2$ となります。これも 2 次関数であるため、全実数 $y$ で偏微分可能です。

関数 f を平面 x=a で切った切り口 z=f(a, y)=a^2-y^2 において、定数 a をいくつか選んで描いたグラフ(全ての曲線は全実数 y で微分可能な 2 次関数である)
関数 $f$ を平面 $x=a$ で切った切り口 $z=f(a,\,y)=a^2-y^2$ において、定数 $a$ をいくつか選んで描いたグラフ(全ての曲線は全実数 $y$ で微分可能な 2 次関数である)

以上より、関数 $f(x,\,y)=x^2-y^2$ は全実数 $x,\,y$ で偏微分可能であることが確認できました。