三平方の定理の証明と使い方
三平方の定理とは、直角三角形の直角をはさむ2辺の長さを a, b, 斜辺の長さを cとしたときに、公式 a2 + b2 = c2 が成り立つという定理です。ここで、斜辺とは、直角三角形の直角に対する対辺のことです。
三平方の定理は、別名、ピタゴラスの定理とも呼ばれます。
三平方の定理(ピタゴラスの定理)
上の直角三角形において
\begin{align*} a^2+b^2 = c^2 \end{align*}
が成り立つ
三平方の定理を使うと、直角三角形の 2 つの辺の長さからもう一つの辺の長さを求めることができます。
このページでは、三平方の定理を分かりやすく説明しています。中学校で学習する前の人にも、三平方の定理の意味を理解してもらえるような解説にしているので、ぜひお読みください。
最初に三平方の定理を実際に使ってその意味を分かってもらった後、定理の証明方法と代表的な三角形の辺の比を求めます。最後に、三平方の定理を使って解く計算問題の解き方を解説しています。
もくじ
三平方の定理を使ってみよう!
まずは、三平方の定理を実際に使って、その使い道を確かめてみましょう!
今、紙とペン、そして定規を持っている方は、実際に下の直角三角形を書いてみてください(単位は cm にするといいでしょう)!
上の三角形は、2 つの辺の長さが 3 cm と 4 cm で、その間の角が 90° である直角三角形です。
このように、直角三角形の2辺の長さが分かっていれば、三平方の定理を使うことでもう一つの辺の長さを求めることができます。
三平方の定理は次の通りです。
三平方の定理(ピタゴラスの定理)
上の直角三角形において
\begin{align*} a^2+b^2 = c^2 \end{align*}
が成り立つ
今わかっている 3 cm と 4 cm は斜辺以外の辺なので、公式の a と b に相当します。これを三平方の定理の公式
\[ a^2 + b^2 = c^2 \]
に代入すると
\[ 3^2 + 4^2 = c^2 \]
となります。これを計算して、c を求めます。
\begin{align*} 9+16 &=c^2 \\[5pt] 25 &= c^2 \\[5pt] c^2 &= 25 \\[5pt] \end{align*}
2 乗して(同じ数を2回かけて)25になる数は 5 と -5 の2つがありますが、辺の長さとして負の数は不適なので、
\begin{align*} c &= 5 \\[5pt] \end{align*}
と求まります。よって、先ほどの直角三角形の斜辺の長さは 5 cm です!
三平方の定理を使うことで、このように直角三角形の2辺の長さから、残りの一辺の長さを求めることが出来るのです。
実際に図を描いた人は、定規で斜辺の長さを測ってみてください!ぴったり 5 cm になっているのではないでしょうか?
三平方の定理の証明
それでは、三平方の定理を証明しましょう。この証明によって、どのような三角形にも三平方の定理が成り立つということを示します。
文字式を使った計算と、括弧の展開が出てきますが、一行ずつじっくりと計算を確認してくださいね。
証明では、下の図形の真ん中にある「白い正方形の面積 S」を 2 通りの方法で求めます。
一つ目の方法はいたって簡単です。真ん中の正方形は一辺の長さが c の正方形なので、
\[ S = c \times c = c^2 \]
となりますね。
続いて2つ目の方法です。2つ目の方法では、周りの大きな正方形から、4つの直角三角形の面積を引くことで、真ん中の小さな正方形の面積 S を求めます。
まず、周りの大きな正方形の一辺の長さは (a + b) なので、その面積は (a + b)2 であることが分かります。
次に、4つある直角三角形のひとつを考えます。底辺と高さを a と b と見れば、その面積は、$\frac{1}{2}ab$ であることが分かります。
よって、真ん中の小さな正方形の面積 S は次の式で求めることができます。
\begin{align*} S &= \text{大きな正方形の面積} - 4 \times \text{直角三角形の面積} \\[5pt] &= (a+b)^2 - 4 \times \frac{1}{2}ab \\[5pt] &= (a^2 + 2ab + b^2) - 2ab \\[5pt] &= a^2 + b^2 \\[5pt] \end{align*}
ここで、2行目から3行目の計算で、(a + b)2 の展開公式を使いました。
このようにして、真ん中の小さな正方形の面積を、もう一つの方法で求めることができましたね。
さて、一つ目の方法で求めた面積 S は、$S = a^2$、二つ目の方法で求めた面積 S は、$S = a^2 + b^2$ でした。このように、真ん中の小さい正方形の面積を 2 通りの方法で求めましたが、その正方形は同じものなので、もちろん面積は等しいです。よって、
\[ a^2 = b^2 + c^2 \]
が成り立ちます。これで、三平方の定理を証明することができました!「平方」とは 2乗のことなので、「三平方の定理」と言われるゆえんは、直角三角形の「三」つの辺それぞれの「平方」、つまり a2, b2, c2 の間に成り立つ関係式ということですね。
代表的な直角三角形の辺の比
三平方の定理を使って、三角定規に使われている 2 つの代表的な直角三角形の辺の長さの比を求めてみましょう!
この 2 つの三角形の一つは、3つの角が 45°、45°、90°の直角三角形です。もう一つは 3 つの角が 30°、60°、90° の直角三角形です。
それぞれの三角形の辺の比を、三平方の定理を使って求めます。
まずは、3つの角が 45°、45°、90°の直角三角形です。この三角形は、正方形をひとつの対角線で分割してできるものです。
よって、斜辺でない2つの辺の長さはともに同じ長さですね。この長さを 1 としましょう。そうすると、もう一つの辺(斜辺)の長さ(これを c とする)は、三平方の定理から次のように求めることができます。
\begin{align*} a^2 + b^2 &= c^2 \\[5pt] 1^2+1^2 &= c^2 \\[5pt] c^2 &= 2 \end{align*}
ここで、2乗して 2 になる数には、$\sqrt{2}$ と $-\sqrt{2}$ の2つがありますが、辺の長さとして負の数は不適なので
\[ c = \sqrt{2} \]
となります。よって、斜辺の長さは $\sqrt{2}$ と求まりました。
相似な三角形の辺の比は等しいので、45°、45°、90°の直角三角形であれば、その3辺の比は $1:1:\sqrt{2}$ であることが分かります。
次に、 3 つの角が 30°、60°、90° の直角三角形を見てみましょう。この三角形は、正三角形を、そのひとつの角の二等分線で分割してできるものです。
正三角形の一辺の長さを 2 とします。頂角の二等分線は底辺を垂直に二等分するので、青い三角形の 60° と 90° で挟まれる辺の長さは 1 です。
ここで三平方の定理を用いると、正三角形の高さにあたる辺の長さ(これを a とする)を求めることができます。青い三角形で三平方の定理を使うと
\begin{align*} a^2 + b^2 &= c^2 \\[5pt] a^2+1^2 &= 2^2 \\[5pt] a^2 &= 3 \end{align*}
辺の長さとして負の数は不適なので
\[ a = \sqrt{3} \]
となります。よって、正三角形の高さに当たる辺の長さは $\sqrt{3}$ と求まりました。
相似な三角形の辺の比は等しいので、30°、60°、90°の直角三角形であれば、その3辺の比は $1:2:\sqrt{3}$ であることが分かります。
以上が、代表的な 2 つの直角三角形の辺の比と、それを三平方の定理から求める手順です。
三平方の定理を使う計算問題の解き方
三平方の定理を使って辺の長さを求める問題を一問解いてみましょう。
三平方の定理の利用法は「直角三角形の2つの辺の長さから、もう一つの辺の長さを求める」ということです。これを意識していれば、三平方の定理を使う問題を完璧に解くことが出来るでしょう!
次の問題を解いてみましょう。
斜辺の長さが 13 cm、他の一辺の長さが 5 cm である直角三角形の、もう一辺の長さを求めよ。
与えられた辺の長さを三平方の定理の公式に代入します。今回は斜辺の長さが分かっているので c = 13(cm)とし、もう一つの辺の長さを a = 5(cm)とします。
三平方の定理
\[ a^2 + b^2 = c^2 \]
にこれらの辺の長さを代入すると
\[ 5^2 + b^2 = 13^2 \]
これを計算すると
\begin{align*} 25 + b^2 &= 169 \\[5pt] b^2 &= 144 \\[5pt] \end{align*}
2乗して(同じ数を2回かけて)144になる数は 12 と -12 です(12 × 12 = 144)。辺の長さとして負の数は不適なので、
\begin{align*} c &= 12 \end{align*}
と求まります。よって、答えの辺の長さは、12 cm です。
定規で問題の図を描ける人は、実際に図形を描いてみましょう!辺の長さが三平方の定理を使って計算した結果と同じであることを確認してみてください。