ラジアン(弧度法)の意味と「度」への変換方法
もくじ
ラジアンとは
ラジアンの定義
ラジアンは国際単位系(SI)の平面角の単位であり、次のように定義されます。
1 ラジアンは円の半径の長さに等しい弧に対する中心角の大きさ
単位の記号は rad であり、これを単位とする角の表し方を弧度法といいます。
と言われても、1回聞いただけではイメージがつかみにくいと思います。そこで、図を使いながら定義を理解していきましょう。
下の図では、円の半径に等しい長さの弧をオレンジ色の線で示しました。この弧に対する中心角(オレンジ色の角)の大きさが 1 ラジアンです。
次の変換の項目で説明する通り、1 ラジアンを「度(°)」に変換すると、約 57.2958° と中途半端な数になってしまいます。実はこの値は無限に続く小数です。
これは困った!なんとわかりにくい角度の表し方だ⁉ と思われるかもしれませんが、ご安心を。度数法では 1°, 2°, … と使うことがあるのに対し、ラジアンを 1 rad, 2 rad, …と整数値で区切って表すことはまずありません。ラジアンの場合は、基本 π を使って角度を表すのです。
それでは続いて、ラジアンと「度」の変換についてご説明します。
ちなみに、ラジアンには rad という単位を付けないことの方が多いです。その理由は、ラジアンは「半径の長さに対する弧の長さの比」すなわち「長さを長さで割ったもの」なので、単位は打ち消し合って無くなっているためです。
「ラジアン」と「度」の変換方法
高校の数学や物理でラジアンを考えるとき、実際は 30°, 45°, 60°, 90°, …という三角定規に登場する代表的角度を変換できればそれで十分といっていいでしょう。これらは、すぐに変換できるよう覚えておかなければなりません。
ですが暗記の前に、一度定義に沿って変換方法を確認しておくことにしましょう。
まずは、1 ラジアンを「度」に変換してみます。
半径 r の円を考えたとき、円周の長さは 2πr で、円周に対する中心角は 360° です。ここで「弧の長さは中心角に比例する」という関係を用いると、 360° に、円周 2πr に対する弧の長さ r (← 1 rad の定義)の比をかけたものが 1 ラジアンとなります。
\begin{align*} 1 \, \mathrm{rad} &= 360^\circ \times \frac{r}{2 \pi r} \\ &= \frac{180^\circ }{\pi} \\ &\approx {57.2958}^\circ \end{align*}
となります。先ほども述べた通り、一般にラジアンを小数の形で表すことはなく、 π が入った状態で書き表します。
それでは逆に、度数法の「度(°, deg)」からラジアン(rad)への変換を行いましょう。例として、1° をラジアンに変換してみます。
ラジアンの定義を逆に考えるとそれは、「中心角 1° に対する弧の長さ」を「円の半径」で割った値となります。すなわち、
\begin{align*} 1^\circ &= \frac{2 \pi r \times \frac{1^\circ}{360^\circ}}{r} \, \mathrm{[rad]} \\ &= \frac{\pi}{180} \, \mathrm{[rad]} \end{align*}
となります。
…と、せっかく計算しましたが、1° をラジアンに変換する機会はほぼないと思います(汗)。先ほども述べた通り、大事なのは、30°, 45°, 60°, 90°, …という代表的な角の変換値です。
上の式で 1° とした部分をこれらの角度に替えていけば、ラジアンに変換することが出来ます。たとえば 180° を変換すると、
\begin{align*} 180^\circ &= \frac{2 \pi r \times \frac{180^\circ}{360^\circ}}{r} \, \mathrm{[rad]} \\ &= \pi \, \mathrm{[rad]} \end{align*}
となります。このようにして計算した「度」とラジアンの代表的変換値を次の項目にまとめています。
「ラジアン」と「度」の代表的変換値
前の項で説明した方法で、30°, 45°, 60°, 90°, …といった代表的な角度をラジアンに変換して表にまとめました。高校生のみなさんは、これらの変換がパパッと出来るように訓練しましょうね!
度数(deg) | ラジアン(rad, 弧度) |
---|---|
0° | \[ 0 \] |
30° | \[ \frac{\pi}{6} \] |
45° | \[ \frac{\pi}{4} \] |
60° | \[ \frac{\pi}{3} \] |
90° | \[ \frac{\pi}{2} \] |
120° | \[ \frac{2}{3} \pi \] |
135° | \[ \frac{3}{4} \pi \] |
150° | \[ \frac{5}{6} \pi \] |
180° | \[ \pi \] |
360° | \[ 2 \pi \] |
なお、弧度法を用いたとき、角 α の動径が表す一般角 θ は、整数 n を用いて次のように表されます。
\[ \theta = \alpha + 2n \pi \]
ラジアンを用いた扇形の弧の長さと面積計算
中心角 θ をラジアン単位として、扇形の弧の長さ l と面積 S を求める公式は次の通りとなります。
\begin{align*} l &= r \theta \\ S &= \frac{1}{2} r^2 \theta = \frac{1}{2} lr \\ \end{align*}
これらの公式の導出は、次の通りです。
扇形の弧の長さについて、円周の長さは 2πr、円周に対する中心角の大きさは 2π(rad)です。弧の長さ l は中心角 θ に比例するから、
\begin{align*} l &= 2\pi r \times \frac{\theta \, \mathrm{[rad]}}{2 \pi \, \mathrm{[rad]}} \\ &= r \theta \end{align*}
扇形の面積について同様に、円の面積は πr2、円周に対する中心角の大きさは 2π(rad)です。扇形の面積 S は中心角 θ に比例するから、
\begin{align*} S &= \pi r^2 \times \frac{\theta \, \mathrm{[rad]}}{2 \pi \, \mathrm{[rad]}} \\ &= \frac{1}{2} r^2 \theta \\ &= \frac{1}{2} r (r \theta) = \frac{1}{2} lr \end{align*}
続いては、ラジアンと「度」の変換問題、ラジアンを使った扇形の弧の長さと面積の計算問題の解き方を説明しています。
ラジアンの計算問題
ラジアンと度数の変換
72° をラジアン(弧度)に変換せよ
答え
前述の関係式より、
\[ 1^\circ = \frac{\pi}{180}\, \mathrm{[rad]} \]
であり、度数(°)とラジアンの間には比例関係あるので、この両辺を 72 倍すると
\begin{align*} 72^\circ &= \frac{\pi}{180} \times 72 \, \mathrm{[rad]}\\ &= \frac{2}{5} \pi \, \mathrm{[rad]} \end{align*}
よって、72° は $ \frac{2}{5} \pi $ (ラジアン)である。
$ \frac{7}{12} \pi $ を度数に変換せよ
答え
360° が 2π [rad] であることを覚えましょう。あとは、度数とラジアンの間には比例関係があるので、
\begin{align*} \frac{7}{12}\pi \, \mathrm{[rad]} &= 360^\circ \times \frac{\frac{7}{12}\pi\, \mathrm{[rad]}}{2 \pi\, \mathrm{[rad]}} \\ &= 105^\circ \end{align*}
よって、$ \frac{7}{12}\pi $ は 105° である。
扇形の弧の長さと面積
半径 6 、中心角 $ \frac{2}{3}\pi $ の扇形の弧の長さ l と面積 S を求めよ
答え
どちらも前述の公式に代入して計算すればよいです。
弧の長さ l について
\begin{align*} l &= r \theta \\ &= 6 \times \frac{2}{3}\pi \\ &= 4 \pi \end{align*}
扇形の面積について
\begin{align*} S &= \frac{1}{2} r^2 \theta \\ &= \frac{1}{2} \times 6^2 \times \frac{2}{3}\pi\\ &= 12 \pi \end{align*}