指数関数の意味と性質、グラフ
もくじ
指数関数とは?
指数関数とは、a > 0, a ≠ 1 のとき y = ax で表される関数のことです。このような関数のことを、a を底とする x の指数関数といいます。
指数関数
\[ y=a^x \]
ただし、$a \gt 0, \, a \neq 1$
このあとの「指数関数のグラフ」で示す通り、指数関数は、x の値が大きくなるにつれて y の値が急激に増加していきます。そのため、非常に急激な数の増加のことを「指数関数的な増加」ということがあります。
音階は指数関数で表される
指数関数はどのような場面で使われているのでしょうか?指数関数は科学や経済など多様な場面で使われていますが、一番身近に存在するのは「音階」でしょう。そう、ドレミファソラシド…というやつです。
音の高さは周波数という、1 秒間あたりの振動の回数で決まっています。音の高さが 1 オクターブ上がる(例えば低い「ド」から次に高い「ド」へ)とき、この周波数は 2 倍になります。この関係は、2 を底とする指数関数で表すことが出来るのです。
もっと具体的に、数字を使って示しましょう。通常音階の基準としては、「ラ」の音を 440 Hz(ヘルツ)に調律します。すると、そこから 1 オクターブ高い「ラ」の音の周波数は、その 2 倍の周波数 440 Hz × 21 = 880 Hz となります。さらに、基準から 2 オクターブ高い「ラ」の音は、880 Hz のさらに 2 倍の 1760 Hz(= 440 Hz × 22)となっているのです。
一般に、440 Hz の「ラ」の音を基準にして、そこから x オクターブ高い「ラ」の音の周波数を y とすると、次の式で表すことができます。
\[ y=440\times 2^x \]
式で表すと、オクターブと周波数の関係が指数関数的に表されることが分かりますね。
ここまではオクターブと周波数の指数関数的関係を示しました。ここからはさらに、ドレミファ…という音階と周波数の間にも指数関数的な関係が成り立つことを説明します。
1 オクターブは 12 の半音(ド、ド#、レ、レ#、ミ、ファ、ファ#、ソ、ソ#、ラ、ラ#、シ)に分けられており、これらの周波数は、1 オクターブを乗法的に 12 等分されています。すなわち、半音上がるごとに、その周波数は $2^\frac{1}{12}=\sqrt[12]{2}\approx 1.06$ 倍になっているのです(記号 $\approx$ は $\fallingdotseq$ と同じで「ほぼ等しい」という意味です)。ここで、$\sqrt[12]{2}$ は 12 乗して 2 になる数です($1.06^{12}\approx 2$)。
下に、440 Hz を基準の「ラ」として、1 オクターブ分の音階の周波数を記しました。半音あがると 1.06 倍(正確には $\sqrt[12]{2} = 1.059463084 \cdots$ 倍)になっていることを確認してみましょう!
\begin{align*} \text{ド}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-9} &= 261.626 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ド#}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-8} &= 277.183 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{レ}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-7} &= 293.665 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{レ#}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-6} &= 311.127 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ミ}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-5} &= 329.628 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ファ}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-4} &= 349.228 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ファ#}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-3} &= 369.994 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ソ}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-2} &= 391.995 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ソ#}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{-1} &= 415.305 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \color{#E17800}{\text{ラ}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{0\hphantom{-}} } &= \color{#E17800}{440.000 \,\mathrm{Hz}} \\[5pt] \text{ラ#}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{1\hphantom{-}} &= 466.164 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{シ}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{2\hphantom{-}} &= 493.883 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \text{ド}\hphantom{\text{#}}\quad 440 \,\mathrm{Hz} \times \left( \sqrt[12]{2} \right)^{3\hphantom{-}} &= 523.251 \,\mathrm{Hz} \\[5pt] \end{align*}
これを見ると、音階が指数関数で表されていることが分かりますね。
ちなみに、このような音階を生み出すため、ギターのフレット(指で押さえる部分)は等間隔となっていません。弦の根元から各フレットまでの長さは $\sqrt[12]{2}\approx 1.06$ 倍刻みになっているため、ギターの先端ほどフレットの間隔が広くなっているのです。
さて、指数関数を身近に感じていただけたでしょうか?続いては、指数関数のグラフと性質を説明します。
指数関数のグラフ
指数関数のグラフは、下の図のような曲線です。
オレンジ色の曲線は $y=2^x$、青色の曲線は $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x$ のグラフです。
ここからは、指数関数のグラフがなぜ上のような形になるのかを一緒に確認していきましょう。
指数関数 y=2x のグラフ
指数関数 $y=2^x$ のグラフは、式 $y=2^x$ の $x$ に様々な値を代入したときの $y$ の値を xy 平面上にプロットすることで得られます。これは、一次関数のグラフを描くのと同じ手順ですね。
$x$ に正の整数を代入した値 $2^1$ や $2^2$ は、中学校で学習した通りの累乗の計算をすればよいだけです。具体的に計算すると、次のようになります
\begin{align*} 2^1 &= 2 \\[5pt] 2^2 &= 2 \times 2 = 4 \\[5pt] \end{align*}
$x$ に 0 や負の数、もしくは分数を代入するとどうなるでしょうか…?これらの値は次のように定義されています。
$a\neq0$ かつ $n$ が整数のとき
\begin{align*} a^0&=1 \\[5pt] a^{-n} &= \frac{1}{a^n} \end{align*}
上の累乗の定義については、「累乗の意味と計算方法」のページをご覧ください。このように定義される理由を説明しています。
上の定義より、指数が 0 や負の整数の場合の値は次のように計算できます。
\begin{align*} 2^0 &= 1 \\[5pt] 2^{-1} &= \frac{1}{2^1} = 0.5 \\[5pt] 2^{-2} &= \frac{1}{2^2} = \frac{1}{4} = 0.25 \\[5pt] \end{align*}
さて、累乗の指数が分数の場合はそうすればいいでしょうか?そのような場合は、累乗根を使って次のように書き表すことができます。
有理数を指数とする累乗
$a\neq0$ で $m$ が整数、$n$ が正の整数のとき
\[ a^\frac{m}{n} = \sqrt[n]{a^m} \]
これを使うと例えば、$2^\frac{1}{2} = \sqrt[2]{2} = \sqrt{2}$ となります。同様に、指数が $\frac{3}{2},\, -\frac{1}{2},\, -\frac{3}{2}$ の場合を計算すると次のようになります。
\begin{align*} 2^\frac{1}{2} &= \sqrt{2} \approx 1.41 \\[5pt] 2^\frac{3}{2} &= \sqrt{2^3} = 2\sqrt{2} \approx 2.83 \\[5pt] 2^{-\frac{1}{2}} &= \frac{1}{2^\frac{1}{2}} = \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2} \approx 0.71 \\[5pt] 2^{-\frac{3}{2}} &= \frac{1}{2^\frac{3}{2}} = \frac{1}{\sqrt{2^3}} = \frac{1}{2\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{4} \approx 0.35 \\[5pt] \end{align*}
ここまで計算してきた値を表にまとめると、次のようになります。
x | … | $-2$ | $-\frac{3}{2}$ | $-1$ | $-\frac{1}{2}$ | $0$ | $\frac{1}{2}$ | $1$ | $\frac{3}{2}$ | $2$ | … |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
y | … | $0.25$ | $0.35$ | $0.5$ | $0.71$ | $1$ | $1.41$ | $2$ | $2.83$ | $4$ | … |
これらの関係を xy 平面にプロットすると、次のようになります。
さらに x の値を細かく取ってプロットすると、次の曲線を得ることができます。これが指数関数 y=2x のグラフです。(累乗は指数が無理数のときにも定義することができます。すなわち、指数関数の定義域は実数全体となります。)
指数関数 y=(1/2)x のグラフ
指数関数 $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x$ のグラフも、$y=2^x$ のグラフと同様、x に様々な値を代入してプロットすることでグラフを描くことができます。x に -2 から 2 まで $\frac{1}{2}$ ずつ増加させながら代入したときの、y の値は次のように計算できます。
\begin{align*} \left(\frac{1}{2}\right)^{-2} &= 2^2 = 4 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{-\frac{3}{2}} &= 2^\frac{3}{2} = \sqrt{2^3} = 2\sqrt{2} \approx 2.83 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{-1} &= 2^1 = 2 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{-\frac{1}{2}} &= 2^\frac{1}{2} = \sqrt{2} \approx 1.41 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{0\hphantom{-}} &= 1 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}\hphantom{-}} &= \frac{1}{2^\frac{1}{2}} = \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2} \approx 0.71 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{1\hphantom{-}} &= \frac{1}{2} =0.5 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{3}{2}\hphantom{-}} &= \frac{1}{2^\frac{3}{2}} = \frac{1}{\sqrt{2^3}} = \frac{1}{2\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{4} \approx 0.35 \\[5pt] \left(\frac{1}{2}\right)^{2\hphantom{-}} &= \frac{1}{2^2} = \frac{1}{4} = 0.25\\[5pt] \end{align*}
この計算結果を表にまとめると、次のようになります。
x | … | $-2$ | $-\frac{3}{2}$ | $-1$ | $-\frac{1}{2}$ | $0$ | $\frac{1}{2}$ | $1$ | $\frac{3}{2}$ | $2$ | … |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
y | … | $4$ | $2.83$ | $2$ | $1.41$ | $1$ | $0.71$ | $0.5$ | $0.35$ | $0.25$ | … |
これらの関係を xy 平面にプロットすると、次のようになります。
さらに x の値を細かく取ってプロットすると、次の曲線を得ることができます。これが指数関数 $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x$ のグラフです。
指数関数のグラフが、なぜこのような曲線になるのかを理解できたでしょうか?続いては、指数関数のグラフの対称性を説明します。
指数関数の対称性
続いて、上で描いた二つの指数関数 $y=2^x$ と $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x$ のグラフを比較してみましょう。
グラフを描くために取った点の座標は、次の表の通りでした。
x | … | $-2$ | $-\frac{3}{2}$ | $-1$ | $-\frac{1}{2}$ | $0$ | $\frac{1}{2}$ | $1$ | $\frac{3}{2}$ | $2$ | … |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$y=2^x$ | … | $0.25$ | $0.35$ | $0.5$ | $0.71$ | $1$ | $1.41$ | $2$ | $2.83$ | $4$ | … |
$y=\left(\frac{1}{2}\right)^x$ | … | $4$ | $2.83$ | $2$ | $1.41$ | $1$ | $0.71$ | $0.5$ | $0.35$ | $0.25$ | … |
この表を見て分かる通り、$y=2^x$ と $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x$ の値は、$x=0$ のときの値を中心として互いに入れ替わった値になっています。
関数を見ると、$y=2^x$ と $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x=2^{-x}$ では指数部分の $x$ と $-x$ が入れ替わった関係になっています。すなわち、$y=2^x$ のグラフと $y=\left(\frac{1}{2}\right)^x=2^{-x}$ のグラフは、y 軸に関して対称であることが分かります。
このように、一般に 2 つの指数関数 $y=a^x$ と $y=\left(\frac{1}{a}\right)^x$ のグラフは y 軸に関して対称となります。
指数関数の性質
指数関数の性質をまとめると、次のようになります。
指数関数の性質
- 定義域は実数全体、値域は正の実数全体である。
- グラフは点 $(0,\,1)$ を通り、$x$ 軸がグラフの漸近線となる。
- 関数の増加、減少について
- a > 1 のとき、x の値が増加すると y の値も増加する。
すなわち、 $p \lt q \Longleftrightarrow a^p \lt a^q$ - 0 < a < 1 のとき、x の値が増加すると y の値は減少する。
すなわち、 $p \lt q \Longleftrightarrow a^p \gt a^q$
- a > 1 のとき、x の値が増加すると y の値も増加する。
また、関数 y=ax の底 a の値を変化させたとき、a の値が大きいほど x におけるグラフの傾きは大きくなります。下に、底 a の値を変化させた指数関数のグラフを示します。
指数を含む方程式や不等式を解くには、次の関係を利用します。
$a \gt 0,\, a\neq 1$ のとき、次の関係が成り立つ
\[ a^p = a^q \quad \Longleftrightarrow \quad p = q \]
この関係を利用して、次の問題を解いてみましょう。
方程式 $25^{1-x}=5^x$ を解け
指数方程式を解くには、$a^p = a^q$ のように必ず底をそろえます。この問題の場合、$25^{1-x}=\left(5^2\right)^{1-x}=5^{2(1-x)}$ より
\begin{align*} 5^{2(1-x)} &= 5^x \\[5pt] \end{align*}
となります。両辺の底を 5 にそろえることができたので、$a^p = a^q \, \Longleftrightarrow \, p = q$ より指数部分の方程式にすることができて
\begin{align*} 2(1-x) &= x \\[5pt] \therefore x &=\frac{2}{3} \\[5pt] \end{align*}
となります。
続いて、指数を含む不等式の問題を解いてみましょう。
不等式 $\left( \frac{1}{3} \right)^x \geqq \frac{1}{9} $ を解け
指数不等式を解く場合も、まずは底をそろえます。その後、底 a が a > 1 か 0 < a < 1 かを判断し、大小比較をします。
$\frac{1}{9} = \left( \frac{1}{3} \right)^2$ であるから、
\[ \left( \frac{1}{3} \right)^x \geqq \left( \frac{1}{3} \right)^2 \]
指数関数 $y=\left( \frac{1}{3} \right)^x$ の底 $\frac{1}{3}$ は 0 より大きく 1 より小さい数であるから、この関数は減少関数である。よって
\[ x \leqq 2\]
以上のように指数関数の性質を使うことで、指数を含む方程式や不等式を解くことができます。