部分積分の公式とその証明方法、使い方のコツ
定積分の部分積分法の公式は次の通りです。
\begin{align*} \int_{a}^{b} f(x)g(x)\,dx = \left[ f(x)G(x) \right]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} f'(x)G(x)\,dx \end{align*}
ここで、G(x) は g(x) の原始関数を表します。
部分積分は、種類の異なる関数の積となっている関数の積分計算に用いられる方法です。たとえば、次の4種類の積分は部分積分を用いることで計算できます。
\begin{align*} &\int (3x+1)\sin x \,dx & &\int x^3 \log x \,dx \\ &\int \log x \,dx & &\int e^x \cos 2x \,dx \end{align*}
このページでは、部分積分法の公式の証明(導出方法)と使い方のコツについて説明しています。また次ページ「部分積分を使う積分計算の解き方」では、上に示した4つの積分計算を例題として解説しています。
もくじ
部分積分の公式と証明方法
まずは部分積分の公式を以下に示します。
\begin{align*} \int_{a}^{b} f(x)g(x)\,dx = \left[ f(x)G(x) \right]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} f'(x)G(x)\,dx \end{align*}
この公式は、積の微分法の公式から得ることが出来ます。
積の微分法の公式は、
\[ \{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x) \]
でした。これは、$ f(x)g(x) $ が右辺の原始関数であることを示しています。よって、
\[ f(x)g(x) = \int f'(x)g(x) \,dx + \int f(x)g'(x) \,dx \]
この等式で項を移項することにより、以下に示す不定積分の部分積分の公式が得られます。
\[ \int f(x)g'(x) \,dx = f(x)g(x) - \int f'(x)g(x) \,dx \]
したがって、定積分の部分積分の公式は次の通りとなります。
\[ \int_{a}^{b} f(x)g'(x) \,dx = \bigl[ f(x)g(x) \bigr]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} f'(x)g(x) \,dx \]
なお、上式の g(x) を G(x) に置き換えた場合、上式の g'(x) は g(x) となります。このように置き換えると、始めに示した形の公式が得られます。
\[ \int_{a}^{b} f(x)g(x) \,dx = \bigl[ f(x)G(x) \bigr]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} f'(x)G(x) \,dx \]
部分積分の公式の使い方
公式の覚え方
部分積分の公式は、記号で覚えるよりも、操作の内容を覚えるのがよいでしょう。公式の右辺の覚え方は、次のような感じです。
積分してそのまま、ひく、インテグラル 積分して微分
先ほどの公式に当てはめて、この呪文の意味を確認してみましょう。
\[ \int_{a}^{b} g(x)f(x) \,dx = \bigl[ \underbrace{G(x)}_{\text{積分して}} \underbrace{f(x)}_{\text{そのまま}} \bigr]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} \underbrace{G(x)}_{\text{積分して}} \underbrace{f'(x)}_{\text{微分}} \,dx \]
上式は、「覚え方」に合わせて、前に示した公式の f(x) と g(x) の掛け算の順序を入れ替えてあります。
覚え方の呪文に出てくる2回の「積分して」という言葉は、左辺の g(x) が、右辺の第1項と第2項でその原始関数 G(x) になっていることを表しています。
「そのまま」というのは、右辺第1項の f(x) は、左辺の f(x) のままだよ、ということです。
最後の「微分」という言葉は、左辺の f(x) が右辺ではその1次導関数 f'(x) になっていることを表しています。
以上が部分積分の公式の覚え方です。それではいよいよ、この公式を使って計算をしてみましょう!
部分積分の使い方
部分積分を使って、次の問題を解いてみましょう。
定積分 $ \int_{0}^{1} xe^x\,dx $ を求めよ
この問題の被積分関数は $ xe^x $ であり、$ x $ と $ e^x $ の積になっています。この2つのうち、微分して簡単になる(次数が低くなるか定数になる)のは、$ x $ なので、こちらを「微分」する方に選び、$ e^x $ を「積分」する方として、先ほどの覚え方を唱えましょう。
$ e^x $ を積分して $ x $ はそのまま、ひく、インテグラル $ e^x $ を積分して $ x $ を微分
これを式に直すと、次の通りとなります。分かりやすいように、1行目では$ x $ と $ e^x $ の掛け算の順序を入れ替えました。肝心な部分積分は、1行目から2行目への変換です。
ちなみに、$ e^x $ は積分しても $ e^x $ のままでしたね。
\begin{align*} \int_{0}^{1} xe^x \,dx &= \int_{0}^{1} e^x \cdot x \,dx \\ &= \bigl[ e^x \cdot x \bigr]_{0}^{1} - \int_{0}^{1} e^x \cdot 1 \,dx \\ &= (e -0) - [e^x]_{0}^{1} \\ &= e - (e-1) \\ &= 1 \end{align*}
このように、部分積分を使うと、2行目の $ \int_{0}^{1} e^x \cdot 1 \,dx $ のように、被積分関数を積分可能なカンタンなカタチにできるというメリットがあるのです。
部分積分法を使うときのコツ
部分積分は「積分する関数が種類の異なる関数の積の形」になっているときに用いるとよいでしょう。例えば、次のような積分です。
\begin{align*} &\int (3x+1)\sin x \,dx & &\int x^3 \log x \,dx \\ &\int \log x \,dx & &\int e^x \cos 2x \,dx \end{align*}
計算のコツは「微分して簡単なカタチ(次数が低い or 定数)になる」関数を微分する関数に選び、もう一方を積分する関数に選ぶということです。また、log x は微分しましょう。
部分積分を用いることで、被積分関数を積分可能な形に持っていくことが必要です。
次ページでは、以下の4つの積分計算を、部分積分を使って解く方法を説明しています。