偏差値とは何か? - 偏差値の意味と求め方

偏差値とは、テストの得点などの数値が、集団の平均値からどの程度へだたっているのかを示す数値です。

偏差値は受験において、集団の中の自分の位置を知るための指標としてよく用いられていますね。自分の得点が平均点に等しいと偏差値は 50 となり、偏差値が高いほど良い成績といえます。一般的なテストにおいて、ほとんどの人の偏差値の値は 25 ~ 75 の範囲に収まります。

テストの偏差値を求めるには、自分の得点から平均値を引いた値を標準偏差(数値のばらつきの程度を示す値)で割って 10 倍し、それに 50 を加えます。公式で表すと、次のようになります。

偏差値 $T_i$ を求める公式

\begin{align*} T_i &= 10\times\frac{x_i-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] ( &= 10z_i+50 ) \\[5pt] \end{align*}

ここで、
 $T_i$ は個々の偏差値
 $x_i$ は個々の数値(得点)
 $\overline{x}$ は平均値(平均点)
 $s$ は標準偏差
 $z_i$ は個々の z-スコア(z-値)
を表します。

このページでは、偏差値の意味求め方メリットデメリットを、わかりやすく説明しています。


もくじ

  1. 偏差値とは
    1. 偏差値から集団の中の自分の位置を知る
    2. 高い偏差値を取るにはどうすればよいか?
    3. 偏差値のメリット(点数との違い)
    4. 偏差値のデメリット(注意点)
  2. 偏差値の求め方
    1. 偏差値の最大値と最小値

偏差値とは

ここでは、偏差値から分かること、得点との違いと偏差値を使うメリット、偏差値を使う上での注意点を説明しています。

偏差値の求め方については、「偏差値の求め方」をご覧ください。

偏差値から集団の中の自分の位置を知る

偏差値とは、テストの得点などの数値が、集団の平均値からどの程度へだたっているのかを示す数値です。

自分の点数が平均点と同じであれば、偏差値は必ず 50 となります。偏差値 50 を基準にして、平均点よりも高い得点なら、偏差値は 50 よりも大きくなり、逆に平均点よりも低い得点なら、偏差値は 50 よりも小さくなります。

一般的なテストにおいて、ほとんどの人の偏差値は 25 ~ 75 の範囲に収まります。すなわち、偏差値 70 ~ 75 程度であれば「非常に成績が良い」といえ、逆に偏差値 25 ~ 30 程度であれば「非常に成績が悪い」といえます。

高い偏差値を取るにはどうすればよいか?

高い偏差値を取るには、とにかく高い点数を取ればよい!のですが、「難しいテストで高い点数を取る」ことができれば、偏差値はより大きくなりやすいです。

難しいテストは、平均点が低いと言い換えることができるでしょう。さらにそのようなテストでは高い点数が取りにくいために、受験者の得点は平均点付近に集中すると考えられます。

このように、① 平均点が低く ② 受験者の得点が平均点付近に集中している テストにおいて高い点数を取ると、高い偏差値を取ることができます。なぜそうなるのかは、「偏差値の求め方」の項目をご覧ください。

逆に、簡単なテストで低い点数を取ると、偏差値は非常に低くなります。

偏差値を使うメリット(点数との違い)

偏差値は、テストの受験者全員の得点に次の 2 つの変換を行った値です。

  1. 平均が 50 になる
  2. 標準偏差が 10 になる

偏差値はこの 2 つの変換を行った値であるため、次のような比較をできるというメリットがあります。

  1. 平均点が異なるテストの成績を比べられる
  2. 得点の分布(ばらつき)が異なるテストの成績を比べられる

ここからは、この 2 つの偏差値の特徴について説明します。

平均点が異なるテストの成績を比べられる

一つ目の偏差値の特徴は、「平均点が異なるテストどうしを比べることができる」ということです。

その理由は、偏差値がテストの受験者全員の得点を平均が 50 になるように変換された値であるためです。

下の例を見てみましょう。英語と数学の 2 つの試験を A さん、B さん、C さんの 3 人が受けた結果と平均点、そして A さんの偏差値を表にまとめました。

英語と数学の得点データと平均値、A さんの偏差値
 英語数学
A さん9070
B さん8060
C さん7050
平均値(点)8060
A さんの偏差値62.262.2

いま、A さんの得点と偏差値に注目します。英語と数学で A さんの得点は異なりますが、偏差値を計算すると、どちらも 62.2 で同じです。

3 人の得点の分布(A さんの得点は異なるが、偏差値はともに 62.2 で同じである。)
3 人の得点の分布(A さんの得点は異なるが、偏差値はともに 62.2 で同じである。)

この理由は、平均点を見れば分かります。表を見ると、英語の平均点は 80 点であるのに対し、数学の平均点は 60 点になっています。すなわち、全体として数学の方が英語よりも難しかったと言えます。

よって A さんの得点は、英語が 90 点、数学が 70 点ですが、平均点が低い数学の方がテストが難しかったので、得点は違うのに、偏差値はどちらの教科も 62.2 と同じ値になっているのです。

得点の分布(ばらつき)が異なるテストの成績を比べられる

もう一つの偏差値の特徴は、「得点の分布(ばらつき)が異なるテストの成績を比べられる」ことです。

その理由は、偏差値がテストの受験者全体のばらつき具合を示す指標(標準偏差)が 10 になるように変換された値であるためです。得点の分布が正規分布に近い場合、標準偏差が異なるテスト間の成績を比べることができます。

先ほどとは別の例を見てみましょう。英語と数学の 2 つの試験を、A さんから E さんの 5 人が受けた結果と平均点、標準偏差、そして A さんの偏差値を表にまとめました。

英語と数学の得点データと平均値、標準偏差、A さんの偏差値
 英語数学
A さん7070
B さん3616
C さん5038
D さん6482
E さん8094
平均値(点)6060
標準偏差(点)15.428.8
A さんの偏差値56.553.5

上の例と同じように、得点の分布を図にまとめると、次のようになります。

5 人の得点の分布(A さんの得点は同じだが、偏差値は異なる。
5 人の得点の分布(A さんの得点は同じだが、偏差値は異なる。

いま、A さんの得点と偏差値に注目します。A さんの英語と数学の得点は共に 70 点であり、英語と数学の平均点はどちらも 60 点で同じです。しかし、A さんの英語の偏差値は 56.5 、数学の偏差値は 53.5 と異なる値になっています。

なぜこのように偏差値が異なるのかを確認していきましょう。この理由は、テストを受けた受験生の分布の仕方(標準偏差で表される)に違いがあるためです。

上に掲載した図をもう一度示すので、英語と数学で得点の広がりに違いがあることを確認してみましょう。

5 人の得点の分布(A さんの得点は同じだが、偏差値は異なる。
5 人の得点の分布(A さんの得点は同じだが、偏差値は異なる。

上の図を見て分かる通り、英語は 5 人の得点が平均点付近に集まっている(標準偏差が小さい)一方、数学は 5 人の得点が平均点から離れた位置に分散しています(標準偏差が大きい)。

受験者全体の得点が平均点付近に密集しているテストでは、平均点から外れた点数を取りにくいといえます。それにも関わらず、平均点よりも高い点数を取ると、偏差値は大きくなります。上の英語の例では、平均点 60 点よりも 10 点高い点数 70 点を取った A さんの偏差値は 56.5 となっています。

一方で、受験者全体の得点が平均点から離れた位置に分散しているテストでは、平均点から外れた点数を取りやすいといえます。このようなテストで平均点よりも高い点数をとっても、それほど偏差値は大きくなりません。上の数学の例では、平均点 60 点よりも 10 点高い点数 70 点を取ったのは英語と変わりませんが、A さんの偏差値は 53.5 と、英語より低くなるのです。


以上 2 つが偏差値を使うメリットです。得点を使うよりも偏差値を使うメリットが分かったでしょうか?

なお、ここでは分かりやすいように 5 人という少ない人数のデータを用いましたが、実際にはもっと人数が多くないと(母集団が多くないと)統計的な価値はありません。

偏差値のデメリット(注意点)

偏差値でものごとを判断するときの注意点はズバリ、「偏差値は母集団に依存する」ということです。

偏差値は、(それを計算するための)同じテストを受けた集団の中で、自分がどの程度の位置にいるかを示す指標です。よって、同じ集団の中で異なるテストの比較をする際には有用ですが、集団が異なるテストの結果を偏差値で比べることはできません。

例えば、全国で行われる模試と、自分の学校の中だけで行われる模試の 2 つがあったとしましょう。この場合、この 2 つの模試は集団が異なっているため、偏差値を使って直接結果を比べることができません。

もし、自分の学校の生徒の分布が全国の生徒の分布と同様であれば、偏差値だけで比較することも可能かもしれません。しかし一般的には、全国平均に比べてレベルが高い学校や、逆に全国平均よりレベルが低い学校があるのが事実です。

すると、全国平均よりレベルが高い学校で低い点数を取ると、学校内の模試での偏差値は低くなりやすい一方、その学校は全国的にレベルが高いので、全国の模試では偏差値が高くなりやすくなります。逆に、レベルの低い学校では高い偏差値が取れても、全国的には低い偏差値になります。

この例のように、偏差値は試験を受けた母集団に依存しています。よって、偏差値で成績を比較する際には、その試験がどのような集団に対して行われたものであるか(所属する学校の模試、都道府県の模試、志望校別の模試など)を確認しておく必要があります。

偏差値の求め方

偏差値は次の式で求めることができます。

偏差値 $T_i$ を求める公式

\begin{align*} T_i &= 10\times\frac{x_i-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] ( &= 10z_i+50 ) \\[5pt] \end{align*}

ここで、
 $T_i$ は個々の偏差値
 $x_i$ は個々の数値(得点)
 $\overline{x}$ は平均値(平均点)
 $s$ は標準偏差
 $z_i$ は個々の z-スコア(z-値)
を表します。

偏差値の計算に必要な標準偏差は、テストの受験者全員の得点から計算するものです。よって、平均点と自分の得点だけでは、偏差値を計算できないことに気を付けましょう。

テストの点数から自分の偏差値を求めてみたいと考えている方は、そのテストの標準偏差が与えられているかを確認しましょう。


それでは、例題を解いて、具体的に偏差値を求めてみましょう。

次に示す、英語の得点データの 3 人の偏差値を求めよ。

英語の得点データ
 点数
A さん71($=x_1$)
B さん80($=x_2$)
C さん89($=x_3$)

偏差値を求めるには、個人の点数の他に、平均点と標準偏差が必要になります。

平均値 $\overline{x}$ は次のように求められます。

\begin{align*} \overline{x} &= \frac{71+80+89}{3} \\[5pt] &= 80 \end{align*}

よって、平均値は 80(点)と求まりました。


次に、標準偏差を求めます。標準偏差を求めるには、次の手順にしたがって順番に計算をします。詳しくは、「標準偏差の意味と求め方」のページをご覧ください。

標準偏差の求め方

  1. 平均値を求める
  2. 偏差(数値 - 平均値)を求める
  3. 分散(偏差の二乗平均)を求める
  4. 分散の正の平方根を計算する

この手順にしたがって、手順 3 の分散まで計算したものが次の表です。

英語の得点データと平均値、偏差、偏差の二乗
 点数偏差偏差の二乗
A さん71-981
B さん8000
C さん89981
平均値8054

上の表、右下の 54 という値が分散 $s^2$ です。

標準偏差 $s$ を求めるには、この分散の正の平方根を取ります。よって、このデータの標準偏差 $s$ は次のようになります。

\begin{align*} s &= \sqrt{54} \\[5pt] &= 3\sqrt{6} \\[5pt] &\approx 7.35 \end{align*}

よって、英語の得点の標準偏差は 7.35 点と求まりました。

繰り返しになりますが、標準偏差の求め方について詳しくは、「標準偏差の意味と求め方」のページをご覧ください。同じ例題を使って、標準偏差を求める手順をより詳しく説明しています。


さて、ここまでの計算で、平均点 $\overline{x}=80$(点)と、標準偏差 $s=7.35$(点)を求めることができました(上の記号 $\approx$ は $\fallingdotseq$ と同じで「ほぼ等しい」という意味です)。

偏差値を求める最後のステップでは、偏差値を求める公式にこれらの値と個々の点数を代入して計算します。

偏差値 $T_i$ を求める公式

\begin{align*} T_i &= 10\times\frac{x_i-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] \end{align*}

まずは A さん($x_1=71$点)の偏差値を計算しましょう。上の式に、A さんの得点 $x_1 = 71$、これまでに求めた平均点 $\overline{x}=80$(点)と、標準偏差 $s=7.35$(点)を代入します。

\begin{align*} T_1 &= 10\times\frac{x_1-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] &= 10\times\frac{71-80}{7.35}+50 \\[5pt] &= 10\times(-1.22)+50 \\[5pt] &\approx 37.8\\[5pt] \end{align*}

となり、A さんの偏差値は 37.8 と求まりました。なお、偏差値は単位を持たない量です。

同様に、B さん($x_2=80$点)と C さん($x_3=89$点)の偏差値は、それぞれ次のように求めることができます。

\begin{align*} T_2 &= 10\times\frac{x_2-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] &= 10\times\frac{80-80}{7.35}+50 \\[5pt] &= 10\times 0+50 \\[5pt] &= 50\\[5pt] T_3 &= 10\times\frac{x_3-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] &= 10\times\frac{89-80}{7.35}+50 \\[5pt] &= 10\times 1.22+50 \\[5pt] &\approx 62.2\\[5pt] \end{align*}

計算式からも分かりますが、B さんの得点は平均点と同じため、その偏差値は 50 となります。

偏差値の求め方を理解していただけたでしょうか? 平均値 → 偏差分散標準偏差 というステップを一つずつ踏んでいけば、それほど難しくないですね。

偏差値の最大値と最小値

偏差値に最大値と最小値はありません。一般的なテストでは、ほとんどの人の偏差値は 25 ~ 75 の範囲に収まりますが、偏差値の計算式上はこれらの範囲を大きく外れた値を取ることもあり得ます。偏差値が 100 を超えたり、0 を下回る場合も考えられます(もっとも、そのような場合に偏差値は価値ある指標ではない思いますが)。

極端な例として、10 人が受験したテストで、9 人が 50 点、残る 1 人が 60 点だったとしましょう。この場合、平均点 $\overline{x}=51$(点)、標準偏差 $s=3.00$(点)となります。

この計算式は次の通りです。

\begin{align*} \overline{x} &= \frac{9\times 50 + 1 \times 60}{10} \\[5pt] &= 51 \\[5pt] s &= \sqrt{\frac{9\times (50-51)^2 + 1\times (60-51)^2}{10}} \\[5pt] &= \sqrt{\frac{90}{10}} \\[5pt] &= 3.00 \\[5pt] \end{align*}

よって、60 点をとった人の偏差値は次のように計算できます。

\begin{align*} T_1 &= 10\times\frac{x_1-\overline{x}}{s}+50 \\[5pt] &= 10\times\frac{60-51}{3.00}+50 \\[5pt] &= 10\times3.00+50 \\[5pt] &\approx 80.0\\[5pt] \end{align*}

となり、偏差値 80 という非常に大きな値となりました。

さらに極端な例として、30 人が受験したテストで、29 人が 50 点、残る 1 人が 60 点だったとしましょう。この場合、60 点を取った人の偏差値は 103.9 となり、偏差値 100 を超えるのです…!

もっとも、ここで挙げたような極端な場合では偏差値そのものにはほとんど価値がなく、「29 人が 50 点、残る 1 人だけが 60 点」というような得点の分布に関する情報の方がよっぽど有用ですね。