濾紙 - 化学実験器具一覧
濾紙(ろ紙)は液体中に含まれる沈殿物や不純物を濾しわけるための多孔質の紙です。濾過に用いられます。このページでは、濾紙の用途、使い方及び注意点を説明しています。
濾紙は小学校で学習する濾過の実験で知っていることでしょう。実はいろいろな種類があり、奥が深いものです。実験内容に応じて使い分ける必要があります。
もくじ
濾紙とは
濾紙(ろ紙)は液体中に含まれる沈殿物や不純物を濾しわけるための多孔質の紙です。濾過に用いられます。
各種溶媒になじみやすく、無機物質をほとんど含まず、濡れても強く、濾過速度が早いなどの特徴を持ちます。
用途に応じて様々な種類の濾紙が使われます
- 定性濾紙
- 濾過した物質の性質・種類を判別するために用いる。一般的に良く用いられる。
- 定量濾紙
- 濾過した物質の量を検出するなど、精密さを要求する実験に用いる。灰分が0.01%程度であり、燃やした際の燃え残りがほとんど出ない。
- クロマトグラフィー用濾紙
- ペーパークロマトグラフィーに使用される。均一な紙質と吸水度を持つ。
- ガラス繊維濾紙
- 硼珪酸ガラス繊維でできた濾紙。セルロース繊維でできたものに比べ、高温で使用でき、濾過時間が短く、沈殿物保持性に優れる。また、強酸・強アルカリ以外の薬品に対してすぐれた耐性がある。
- 円筒濾紙
- 片方が閉じた筒状の濾紙。主にソックスレー抽出器に使われる。各種繊維でできたものが販売されている。
- PTFE濾紙
- 繊維状のPTFE(四フッ化エチレン/テフロン)を使用したろ紙。酸、アルカリ、酸化剤などに優れた耐性を持つ。使用後は濾紙を洗浄することで、繰り返し利用できる。疎水性のため、濾紙を通過しやすい液体と通過しにくい液体がある。
上記の様々な材質の濾紙に対して、色々な目の細かさのものがあります。目の細かいものは小さな粒子を捕獲できる反面、濾過時間が長くなってしまうため、用途に応じて使い分ける必要があります。
定量濾紙は、重量分析をする際に用いられます。重量分析をする際は、濾過した沈殿を濾紙ごとるつぼに入れ、乾燥させます。この時、濾紙を炭化・灰化させ、ろ紙は完全に燃やします。そのため、定量濾紙はこの燃え残り(灰分)が非常に少なくなっています。
値段は大きさや材質により大幅に異なりますが、直径90mmのNo.1定性ろ紙100枚入りが500円程度で購入できます。
濾紙の使い方
濾紙は、漏斗に装着して使用します。三角型の漏斗では濾紙を折ってから使用しますが、ブフナー漏斗や桐山漏斗では濾紙を折らずにそのまま載せます。
以下、三角型の漏斗を用いた自然濾過の手順を説明します。
- 濾紙を折って、漏斗に装着する。また、漏斗の足の長いほうを、ビーカーの内壁に接触させる。
- 純水で濾紙を濡らし、漏斗に密着させる。←この時、足の部分に水がたまるようにすると、この水が重力により引っ張られることで濾過速度が速くなる。
- 試料溶液(母液)中の沈殿をできる限り沈降させた後、上澄み部分から順にガラス棒を用いて漏斗に注ぐ。
- 濾過した溶液と同じ溶媒を用いて、母液中の沈殿をすべて洗い落とす。また、結晶を十分に洗う。
- 濾過が終了したら、濾紙をピンセットなどでつまみ、別の濾紙上などに広げて風乾する。
母液の温度が低下すると、目的でない結晶が生じてしまうような場合は、保温漏斗を用いて熱時濾過をします。
濾紙使用上の注意
ADVANTEC社の濾紙は、包装の上側(製品名が書かれている側)が表面です。この表面が、濾過前の液体が接する側にセットします。表裏を逆にすると、濾過寿命が短くなることがあるとのことです。
ひだ折濾紙を使用する際は、濾紙を折る際に、中心部を強く折らないようにします。何度も折り返すと、濾紙が裂けてしまう可能性があります。
他の実験器具の用途や使い方も解説しています。