安全ピペッター - 化学実験器具一覧
もくじ
安全ピペッターとは
安全ピペッターは、有害な液体をピペット(ホールピペットやメスピペットなど)で吸い上げるとき、ピペット上部に装着して使用するゴム球です。英語では "safety pipette filler" と呼びます。
高校の教科書に少し出てきて、なんか使い方難しそうだな~と思っていましたが、慣れればそんなこともありません。仕組みも簡単です。
大学の実験では、ホールピペットを口で吸うことはめったになく、安全ピペッターを使います。口に入ったらヤバい物質をいろいろ扱いますから。
球部と差し込み部分を取り外して分解できるタイプがあります。後述の通り、操作をミスるとピペッター内に液体を吸い上げてしまいます。このようなときは分解できるタイプの方が、洗浄・乾燥ができるため便利です。
安全ピペッターの使い方
ただのゴム球に比べると操作が複雑なので、しっかりと覚えましょう!空気がどのように動くかを意識するといいですよ!
安全ピペッターには、真ん中のゴム球に加え、A(Air)、S(Suction)、E(Ejection(?))の3つのボタンがあります。この3つの使用順序を覚えましょう。
- 安全ピペッターをピペットに取り付ける
- ピペットの先端を、液体内に十分差し込む。←大事!
- Aを押しながら球部を押し潰し、球部の空気を抜く。
- Sを押して標線よりやや上まで液体を吸い上げる。
- Eを押しながらメニスカスの下端を標線に合わせる。この際、ピペットは垂直に立てておく。また、先端は液体から出しておく。
- Eを押しながら別の容器に移す。
- Eを押し、Eのバルブ側にある穴をふさぎ、Eの隣にある小さな球部を少し押し潰して最後の一滴を出す。
安全ピペッター使用上の注意
液体を吸い出す際は、必ずピペットの先端を容器の十分奥まで差し込みます。吸い出す途中に液面が先端よりも下にくると、急激に吸い上げられ、安全ピペッター内に溶液が入り込んでしまいます。(液体ではなく空気が吸い上げられるため)。
分解できないタイプのピペッター内部に液体が入り込んだ場合は、洗浄と乾燥がかなり面倒です。洗浄する場合は、適当な有機溶媒で洗った後、ドライヤーを当てながら空気を出し入れすれば、比較的早く乾くかと思います。
安全ピペッターのしくみ・原理
使用方法をボタンの名前で覚えるよりも、安全ピペッターのしくみを理解した方が早いと思います。
安全ピペッターの3つのバルブは、何もしていない状態では「閉じて」います。それを押し潰すことによってバルブが「開き」、空気が出入りできるようになります。
もう少し詳しく説明すると、各バルブには球が入っています。押しつぶしていない状態では球が周りのゴムとくっついているために空気が出入りできません。しかし、バルブを押し潰すことで球の周りのゴムが変形し、球との間に隙間ができることにより、空気が通るようになります。
さて、各操作で空気がどのように動いているのかを確認しましょう。
まず、Aを押しながら球を押し潰すことにより、球の中の空気が排気されます。操作後、Aを放すと、球は押しつぶされた状態のままとなります。
次にSを押してピペット内に液体を吸い上げます。これは、先ほど押しつぶされた球が元の形に戻ろうとする圧力によります。
最後にEを押すことで液体を出します。これはピペット内の液体が自重で下に落ちることによります。
このように仕組みを理解できれば、そんなに難しい操作ではないですね。回数をこなして慣れてください!
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