三角関数の合成公式 - 三角関数の公式一覧
三角関数の合成とは、a sin θ + b cos θ のように、角 θ が等しいサインとコサインを、1つのサインの関数にまとめることです。三角関数の合成公式は、次の式で表されます。
三角関数の合成公式
\begin{align*} a\sin\theta + b\cos\theta &= \sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha) \\[5pt] \text{ただし} \\[5pt] \cos\alpha &= \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} \\[5pt] \sin\alpha &= \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} \\[5pt] \end{align*}
上の式ではサインの形に合成しましたが、実はコサインの形に合成することもできます。この点には後ほど触れます。
三角関数の合成を行うことで、変数 θ を1か所にまとめられるというメリットが生まれます。このページ後半で、関数の最大値や最小値を求める問題を実際に解いて、この意味を確認してみましょう。
もくじ
三角関数の合成公式
前述の通り、三角関数の合成公式は、一般に次の式で表されます。
三角関数の合成公式
\begin{align*} a\sin\theta + b\cos\theta &= \sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha) \\[5pt] \text{ただし} \\[5pt] \cos\alpha &= \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} \\[5pt] \sin\alpha &= \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} \\[5pt] \end{align*}
それでは、この式がどのように導かれるのかを見ていきましょう。
三角関数の合成公式の導出方法
三角関数の合成公式は、加法定理を(逆に)利用することで導かれます。
上の図のように、点P(a, b) をとり、線分OPがx軸の正の向きとなす角を α とすると、
\[ \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}=\cos\alpha,\quad \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}=\sin\alpha \]
となります。よって、次にように式変形することができます。
\begin{align*} a\sin\theta + b\cos\theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left( \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin\theta +\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos\theta \right) \\[5pt] &= \sqrt{a^2+b^2}(\cos\alpha\sin\theta+\sin\alpha\cos\theta) \\[5pt] &=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha) \\[5pt] \end{align*}
一番最後の式変形では、サインの加法定理を(逆に)用いました。
以上で、三角関数の合成公式を証明することができました。
それでは、この公式を使って、計算問題を解いてみましょう!
三角関数の合成公式を使う計算問題
単純に三角関数を合成する問題
$\sqrt{3}\sin\theta + \cos\theta $ を $r\sin(\theta+\alpha)$ の形に変形せよ
この問題は $r\sin(\theta+\alpha)$ の形に変形せよという問題ですが、コサインの形に変形することもできます。解答の後半では、コサインへの合成方法を示します。
$ a=\sqrt{3},\,b=1 $ と考えると、三角関数の合成公式より、次のように r と α の値を得ることができます。
\[ r = \sqrt{(\sqrt{3})^2+1^2} = 2\]
\[ \cos\alpha=\frac{\sqrt{3}}{2},\quad\sin\alpha=\frac{1}{2} \]
これを満たす角 α は
\[ \alpha = \frac{\pi}{6} \]
なので
\begin{align*} \sqrt{3}\sin\theta + \cos\theta &= 2\sin\left( \theta+\frac{\pi}{6} \right) \end{align*}
と、sin の形に合成できました。
コサインへの合成
今回の例題をサインの形ではなく、コサインの形 $r\cos(\theta-\alpha)$ に合成することを考えてみましょう。
先ほどは、関数を $\sqrt{3}\sin\theta + \cos\theta $ と見ましたが、ここでは項の順番を逆にして、$\cos\theta +\sqrt{3}\sin\theta$ と見ます。下の図のように、点$\mathrm{P}(1,\sqrt{3}) $ をとると、$r=\mathrm{OP}=2 $、動径OPの表す角は $\frac{\pi}{3}$ です。
したがって、コサインの加法定理を(逆に)用いると、次のように cos の形に合成することが出来ます。
\begin{align*} \sqrt{3}\sin\theta + \cos\theta &= 2\left( \frac{1}{2}\cos\theta + \frac{\sqrt{3}}{2}\sin\theta \right) \\[5pt] &= 2\left( \cos\theta\cos\frac{\pi}{3} +\sin\theta\sin\frac{\pi}{3} \right) \\[5pt] &= 2\cos\left( \theta-\frac{\pi}{3} \right) \\[5pt] \end{align*}
このように、三角関数の合成は sin の形に限ったものではなく、cos の形に合成することもできるのです。
ちなみに、cos の形に合成することを考えると、ベクトルの内積として見ることもできますね…。
関数の最大値・最小値を求める問題
角 α が明確に求まる場合
$ 0 \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2} $ のとき、$ \sin\theta + \sqrt{3}\cos\theta $ の最大値を求めよ。
三角関数の合成公式を用いて、変数 θ を1か所にまとめます。
\begin{align*} \sin\theta + \sqrt{3}\cos\theta = 2\sin\left(\theta+\frac{\pi}{3}\right)\end{align*}
この関数の定義域は、$ 0 \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2} $ より $ \frac{\pi}{3} \leqq \theta+\frac{\pi}{3} \leqq \frac{5}{6}\pi $ です。
したがって、上の図より
\[ \frac{1}{2} \leqq \sin\left(\theta+\frac{\pi}{3}\right) \leqq 1 \]
ゆえに
\[ 1 \leqq 2\sin\left(\theta+\frac{\pi}{3}\right) \leqq 2 \]
よって最大値は 2 である。
角 α が明確に求まらない場合
$ \frac{\pi}{6} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2} $ のとき、$ 3\sin\theta + 4\cos\theta $ の最大値を求めよ。
この問題は上の問題と違い、α の値が求まらないタイプです。しかし、α の関係式から、θ+α が動く範囲を考えて解くことができます。
それでは、上の問題同様に、三角関数の合成公式を用いて、変数 θ を1か所にまとめます。
\begin{align*} 3\sin\theta + 4\cos\theta = 5\sin\left(\theta+\alpha\right) \\[5pt] \end{align*}\begin{align*} \text{ただし} & \\[5pt] \cos\alpha &=\frac{3}{5},\,\sin\alpha=\frac{4}{5} \end{align*}
角 α の値は求まりませんが、上の関係より、第1象限の角であることが分かります。さらに、
\[ \sin\alpha=\frac{4}{5} \lt \sin\frac{\pi}{3} \]
より、下の図で $\angle AOX \lt \frac{\pi}{3} $ であることが分かります。
よって、$ \frac{\pi}{6}+\alpha \leqq \theta+\alpha \leqq \frac{\pi}{2}+\alpha $ のとき、関数 $5\sin\left(\theta+\alpha\right)$ は、上の図の半径5の円周上を、点Pから点Qまで動くときの y 座標を示すことになります(図の青色矢印の範囲)。
したがってこの関数の最大値は 5 であることが分かりました。
次のページでは、三角関数の公式を一覧にまとめています。