三角関数の公式一覧
このページでは、高校学習レベルの三角関数の公式を一覧にしています。三角関数の定義をはじめ、三角関数の相互関係、周期性、加法定理、積和・和積、微分の公式を掲載しています。また、三角形に応用したときの正弦定理や余弦定理も、図と共に掲載しています。
導出方法はみなさん自身でご確認の上、公式を確認してくださいね。
もくじ
三角関数の定義
一般角に対する定義
一般角 θ に対する、三角関数(sin, cos, tan)の定義は次の通りです。
座標平面上に、原点 $\mathrm{O}$ を中心とする半径 $r$ の円を描く。$x$ 軸の正の部分を始線として、角 $\theta$ の動径と円 $\mathrm{O}$ との交点の座標を $\mathrm{P}(x,y)$ としたとき、$\sin\theta, \cos\theta, \tan\theta$ をそれぞれ次のように定義する。
\begin{align*} \sin \theta = \frac{y}{r} \\[5pt] \cos \theta = \frac{x}{r} \\[5pt] \tan \theta = \frac{y}{x} \\[5pt] \end{align*}
ただし、$x=0$ となるような $\theta$ に対して、$ \tan \theta $ は定義されない。
弧度法(ラジアン)について
三角関数に用いる角度は、一般にラジアンを用います。ラジアンは次のように定義されます。
1 ラジアンは円の半径の長さに等しい弧に対する中心角の大きさ
このページで示している三角関数の公式も、すべてラジアンで表記しています。
ラジアンに関して詳しくは、『ラジアン(弧度法)の意味と「度」への変換方法』をご覧ください。
直角三角形を用いた三角比の表現
三角比とは、三角関数を角度 0° ~ 90° の範囲に限定して考えたものです。三角比は、直角三角形を使って、次のように表されます。
\begin{align*} \sin A = \frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{AB}} \\[5pt] \cos A = \frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{AB}} \\[5pt] \tan A = \frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{AC}} \\[5pt] \end{align*}
三角関数のさまざまな基本公式
三角関数の相互関係の式
三平方の定理および、タンジェントの定義より、次の3つの関係式が得られます。どれもすべて重要ですので、公式として覚えましょう。
\begin{align*} \sin^2 \theta + \cos^2 \theta &=1 \\[5pt] 1+\tan^2 \theta &= \frac{1}{\cos^2 \theta} \\[5pt] \tan \theta &= \frac{\sin \theta}{\cos \theta} \\[5pt] \end{align*}
三角関数の周期性と対称性から得られる公式
三角関数には、周期性と対称性があります。この性質より、以下の関係式が得られます。
なお、周期性とは、角 θ の大きさに対して、関数(sin θ, cos θ, tan θ)の値が、一定の θ の間隔で繰り返されることを言います。また対称性とは、三角関数のグラフが、対称軸や対称中心を持つことをいいます。
三角関数の場合は、ある角度 θ を動かすと、別の三角関数に変換できることも多いです。
三角関数はすべて、2nπ の周期性を持ちます。
\begin{align*} \sin (\theta + 2n\pi ) &= \sin \theta \\[5pt] \cos (\theta + 2n\pi ) &= \cos \theta \\[5pt] \tan (\theta + 2n\pi ) &= \tan \theta \\[5pt] \end{align*}
$-\theta$ の三角関数
\begin{align*} \sin (-\theta) &= -\sin \theta \\[5pt] \cos (-\theta) &= \cos \theta \\[5pt] \tan (-\theta) &= -\tan \theta \\[5pt] \end{align*}
$\theta + \frac{\pi}{2}$ の三角関数
\begin{align*} \sin \left(\theta + \frac{\pi}{2} \right) &= \cos{\theta} \\[5pt] \cos \left(\theta + \frac{\pi}{2} \right) &= -\sin{\theta} \\[5pt] \tan \left(\theta + \frac{\pi}{2} \right) &= -\frac{1}{\tan \theta} \\[5pt]\end{align*}
$\frac{\pi}{2} - \theta $ の三角関数
\begin{align*} \sin \left(\frac{\pi}{2} - \theta \right) &= \cos{\theta} \\[5pt] \cos \left( \frac{\pi}{2} - \theta \right) &= \sin{\theta} \\[5pt] \tan \left( \frac{\pi}{2} - \theta \right) &= \frac{1}{\tan \theta} \\[5pt]\end{align*}
$\theta + \pi$ の三角関数
\begin{align*} \sin \left(\theta + \pi \right) &= -\sin \theta \\[5pt] \cos \left(\theta + \pi \right) &= -\cos \theta \\[5pt] \tan \left(\theta + \pi \right) &= \tan \theta \\[5pt] \end{align*}
$ \pi - \theta$ の三角関数
\begin{align*} \sin (\pi - \theta) &= \sin \theta \\[5pt] \cos (\pi - \theta) &= -\cos \theta \\[5pt] \tan (\pi - \theta) &= -\tan \theta \\[5pt] \end{align*}
加法定理と関連する公式
加法定理
角の和や差の三角関数について、以下の加法定理が成り立ちます。
sin, cos, tan の各式に対して、複合同順でそれぞれ2つの公式が存在します。
\begin{align*} \sin(\alpha \pm \beta) &= \sin\alpha\cos\beta \pm \cos\alpha\sin\beta \\[5pt] \cos(\alpha \pm \beta) &= \cos\alpha\cos\beta \mp \sin\alpha\sin\beta \\[5pt] \tan(\alpha \pm \beta) &= \frac{\tan\alpha \pm \tan\beta}{1 \mp \tan\alpha\tan\beta} \\[5pt] \end{align*}
2倍角の公式
上の加法定理にて、$\beta$ を $\alpha$ に置き換えることで、次の2倍角の公式が得られます。
2倍角の公式とは、角 2α(左辺)の三角関数を、角 α の三角関数に変換する(右辺)公式です。
\begin{align*} \sin2\alpha &= 2\sin\alpha\cos\alpha \\[5pt] \cos2\alpha &= \cos^2\alpha - \sin^2\alpha \\[5pt] &= 1-2\sin^2\alpha \\[5pt] &= 2\cos^2\alpha -1 \\[5pt] \tan2\alpha &= \frac{2\tan\alpha}{1-\tan^2\alpha} \end{align*}
3倍角の公式
上の2倍角の公式を2回繰り返して用いることで、次の3倍角の公式が得られます。
3倍角の公式とは、角 3α の三角関数(左辺)を、角 α の三角関数に変換する(右辺)公式です。
\begin{align*} \sin3\alpha &= 3\sin\alpha - 4\sin^3\alpha \\[5pt] \cos3\alpha &= 4\cos^3\alpha - 3\cos\alpha \\[5pt] \end{align*}
半角の公式
コサインの2倍角の公式より、サインとコサインの半角の公式が得られます。さらに、この2式より、タンジェントの半角の公式を得られます。
半角の公式とは、角 α/2 の三角関数(左辺)を、角 α の三角関数に変換する(右辺)公式です。
\begin{align*} \sin^2\frac{\alpha}{2} &= \frac{1-\cos\alpha}{2} \\[5pt] \cos^2\frac{\alpha}{2} &= \frac{1+\cos\alpha}{2} \\[5pt] \tan^2\frac{\alpha}{2} &= \frac{1+\cos\alpha}{1+\cos\alpha} \\[5pt] \end{align*}
三角関数の合成公式
$a\sin \theta + b\cos\theta$ のように、角 θ が等しいサインとコサインは、次のようにサインの形にまとめることが出来ます。これを三角関数の合成といいます。
\begin{align*} a\sin\theta + b\cos\theta &= \sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha) \\[5pt] \text{ただし} \\[5pt] \cos\alpha &= \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} \\[5pt] \sin\alpha &= \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} \\[5pt] \end{align*}
積和・和積の公式
積和の公式
加法定理の2つの式を辺々加えることで、積和の公式が得られます。
積和の公式とは、2つの三角関数の積を、三角関数の和(・差)の形に変換する公式です。
\begin{align*} \sin\alpha \cos\beta &= \frac{1}{2} \{ \sin(\alpha+\beta) + \sin(\alpha - \beta) \} \\[5pt] \cos\alpha \sin\beta &= \frac{1}{2} \{ \sin(\alpha+\beta) - \sin(\alpha - \beta) \} \\[5pt] \cos\alpha \cos\beta &= \frac{1}{2} \{ \cos(\alpha+\beta) + \cos(\alpha - \beta) \} \\[5pt] \sin\alpha \sin\beta &= - \frac{1}{2} \{ \cos(\alpha+\beta) - \cos(\alpha - \beta) \} \\[5pt] \end{align*}
和積の公式
積和の公式の右辺と左辺を逆に見ると、次の和積の公式が得られます。
和積の公式とは、2つの三角関数の和(・差)を、三角関数の積の形に変換する公式です。
\begin{align*} \sin \alpha + \sin \beta &= 2\sin\frac{\alpha+\beta}{2} \cos\frac{\alpha-\beta}{2} \\[5pt] \sin \alpha - \sin \beta &= 2\cos\frac{\alpha+\beta}{2} \sin\frac{\alpha-\beta}{2} \\[5pt] \cos \alpha + \cos \beta &= 2\cos\frac{\alpha+\beta}{2} \cos\frac{\alpha-\beta}{2} \\[5pt] \cos \alpha - \cos \beta &= -2\sin\frac{\alpha+\beta}{2} \sin\frac{\alpha-\beta}{2} \\[5pt] \end{align*}
微分・積分の公式
微分の公式
三角関数の基本的な微分公式は次の通りです。
\begin{align*} (\sin x )' &= \cos x \\[5pt] (\cos x)'& = - \sin x \\[5pt] \left( \tan x \right)' &= \frac{1}{\cos^2 x} \\[5pt] \end{align*}
$\frac{1}{\tan \theta}$ を微分すると次の導関数が得られます。
\begin{align*} \left(\frac{1}{\tan x} \right)' &= - \frac{1}{\sin^2 x} \end{align*}
さらに、サインとコサインの第 n 次導関数は次の通りです。
\begin{align*} \left(\sin x \right)^{(n)} &= \sin \left( x + \frac{1}{2}n \pi \right) \\ \left(\cos x \right)^{(n)} &= \cos \left( x + \frac{1}{2}n \pi \right) \end{align*}
積分の公式
三角関数の基本的な積分公式は次の通りです。上に挙げた4つの微分公式を逆に見ることで、確認ができますね。
\begin{align*} \int \sin x \,dx &= -\cos x +C \\[5pt] \int \cos x \,dx &= \sin x +C \\[5pt] \int \frac{1}{\sin^2 x} \,dx &= -\frac{1}{\tan x} +C \\[5pt] \int \frac{1}{\cos^2 x} \,dx &= \tan x +C \\[5pt] \end{align*}
$C$ は積分定数
三角関数の三角形への応用
ここからは、三角関数を利用した三角形の公式をまとめています。
正弦定理
三角形の3つの頂点を通る円はただ1つに決まり、これを外接円といいます。この外接円の半径を R として、次の正弦定理が成り立ちます。
\begin{align*} \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R \end{align*}
$R$ は $\triangle ABC$ の外接円の半径
余弦定理
三角形の1つの角と3辺の長さの間には、次の余弦定理が成り立ちます。
三角形の2辺とその間の角が分かっていれば、余弦定理を使うことで、残り1辺の長さを求めることができます。
\begin{align*} a^2 &= b^2 + c^2 -2bc\cos A \\[5pt] b^2 &= c^2+a^2-2ca\cos B \\[5pt] c^2 &= a^2+b^2-2ab\cos C \\[5pt] \end{align*}
この余弦定理の式を変形することで、三角形の3辺の長さから角の大きさを求めることができます。
\begin{align*} \cos A &= \frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} \\[5pt] \cos B &= \frac{c^2+a^2-b^2}{2ca} \\[5pt] \cos C &= \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} \\[5pt] \end{align*}
sin を使った面積公式
三角形の2辺とその間の角が分かれば、サインを用いて次のように三角形の面積を求めることが出来ます。
\begin{align*} S &= \frac{1}{2}bc\sin A \\[5pt] &= \frac{1}{2}ca\sin B \\[5pt] &= \frac{1}{2}ab\sin C \\[5pt] \end{align*}
ヘロンの公式(参考)
三角形の3辺の長さが分かっていれば、次のヘロンの公式により、その三角形の面積を求めることが出来ます。
\begin{align*} S &= \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \\[5pt] \text{ただし} \\[5pt] s &= \frac{a+b+c}{2} \end{align*}
この公式自体に三角関数は現れませんが、上の sin を用いた面積公式と、余弦定理から導かれています。
2直線のなす角と傾きの関係
2直線の傾きとその間の角 θ に関して、次の式が成り立ちます。
互いに垂直でない2直線
\[ y=m_1x+n_1, \quad y=m_2x+n_2 \]
のなす角を $\theta$ として
\[ \tan \theta = \frac{m_1-m_2}{1+m_1m_2} \]